俺の兄貴は、色々とおかしい気がする。(byケイ12歳の心情)
「ただいまー。突然だけど私、結婚したからなー。こいつ、嫁」
「「・・・は?」」
ドラマの撮影だとかで半月ぶりに帰宅したパーシヴァルは、玄関のドアを開けて弟達と対面するなり爆弾発言を投下してきた。
「ジャンヌ・ロメだ。嫁だの妻だの言われるのは癪だが、結婚したのは事実だからな。・・・まあよろしく」
「「はあぁぁぁ〜!!??」」
兄の横でぺこりと頭を下げた男装の麗人に、わけが分からず首を傾げた幼いアーサー以外の弟たちの悲鳴が上がった。
これが叫ばずにいられるか!
場所は変わってリビング。
何故だか正座の次男三男。渦中の人であるはずの長男夫婦は何事もないかのようにソファーに座っている。
「ほ、本当に、結婚?したの?・・・マジで?」
「ケイ。兄さんは何時でも真面目だ」
「いきなり嫁さん連れてくる奴のどこが真面目なんだ・・・?」
「えーと・・・本当に籍入れてきたの?事実婚とかじゃなくて?」
「ああ。ほら、これ戸籍のコピー」
「・・・・・・本当だ。夫婦別姓だけど」
「そのほうが面倒が少ないからな」
それでいいのか兄貴。
それでいいんだよな兄貴。
でも俺達はそうはいかないんだよ反面教師突入者。
話の矛先を未来(てか現在進行形)の義姉に向ける。
「えーと・・・出会いは何時頃なんでしょーか?」
「・・・・・・半年前?」
なんで疑問系。
「いや、その前にも1回・・・」
「あれはほとんどすれ違ったようなものだろう」
「じゃあやっぱり半年前の仕事のときだ」
「付き合い始めたのは・・・半月前?」
また疑問系。てかこの話に何回『?マーク』使ってんだ。
「まあそれぐらいだろうな」
「・・・短くないか?」
付き合って半月でゴールインですか。
女性雑誌記者たちが喜びそうなエピソードがたくさんありそうだ。
「人生なんてその場のノリと勢いで乗り越えていくもんだぞ」
「おいこらまてや年長者」
「とまあ冗談は置いといて、ついでになれ初め話とかも後にして」
「していいのかよ」
「いいんだよ。・・・というわけで、お前たちの義姉さんになったジャンヌ・ロメだ。男装してるのは事務所の都合というかそういうキャラだからっていうか・・・えーと、とにかく近々『シュヴァリエ』って言う歌手ネームでデビュー予定」
「・・・兄さん、新人の子に手ぇ出したの」
「人聞きが悪いことを言うんじゃない」
「いってー!パース兄が殴った!」
「今のはガヴェインが悪いよ」
殴られて頭を押さえて叫ぶガヴェインの頭をアーサーが小さい手で撫でた。
「別に無理して義姉と思う必要も呼ぶ必要もないが?」
「いや、えーと・・・確かに今すぐ呼べって言うには経験値が足りてないけど別に嫌なわけじゃ・・・って、アーサー?」
この事態をどうやって収束させたらいいんだと悩みだしたケイの視界の端で、ガヴェインの膝の上から下りたアーサーがとことことジャンヌに近づく。
低い視点からめいっぱい頭を後ろに向けて彼女の顔を見上げようとしている。
「・・・・・・」
「・・・・・・なんだ?」
「・・・おねーちゃん?」
ことりと首を傾げる仕草+舌足らずな声+上目遣い=最強。
「〜〜〜〜〜//////////!!」
「おお!空気が輝いた!」
「・・・いい人っぽいな」
「うん、気が合いそうだ」
「いい表情になってるしな」
「ついでに花も舞ってるよな」
「流石私の嫁!」
「っ!!!」
「あ、兄さんが殴られた」
「顔が赤いな」
「照れ隠しだろうな」
「照れ隠しみたいだな」
いい家族になれそうデス。
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