ドラマ・ヘタリアスタッフ一同が介した会議室。
 暗黙の了解に押されたフランシスが聞きたくないなぁ・・・という表情を隠さぬままに口火を切った。

「で?今度は何するつもりだ?監督」
「・・・・・・なんか視線が刺々しくない?」
「これまでの貴方の所業を振り返ってから言いなさい」
「んー・・・・・・」

 菊の鋭いツッコミに、しばらく己の所業を振り返っていたらしい監督は、「まあいいや」の一言でその話題を打ち切った。
 各所から諦めと疲労の溜め息が漏れる。

「次の放送からヘタリアは百年戦争編で数週間続けて放送――まあ長期連載することになるんだけど、出るのはヨーロッパメンバーの一部だけだから、残りの人たちで新年・クリスマス特番の撮影をすることにしようかと思う」
「・・・珍しく”監督”らしいことを言いましたね」
「そうだナ」

 想像していたよりも遥かに現実的な話題に、ローデリヒが感嘆の声を洩らし王の同意を得た。

 他の共演者たちも同じような反応をする間に、普段の数倍は分厚い【百年戦争編】の台本と特番の企画書が配られ、おおまかなタイムスケジュールがホワイトボードに貼り付けられる。

「特番のほうはまだ構想段階だからざっと目を通す程度でいいよ。
 百年戦争はジャンヌ・ダルク&フランスを中心にラブロマンス風味でいくから。ちなみにジャンヌ役は歌手のシュヴァリアさん。次の撮影のときに紹介するね」
「シュヴァリエといえば、この話のOP・EDは彼女とうちのコラボでしたよね?」
「そう。OPをエーデルシュタインさん所属バンド”ダルマシー”がシュヴァリエさん提供の曲で、EDがダルマシーがシュヴァリエさんに提供した曲で」
「てことはOP・ED映像も撮るのかよ」
「そうだよ」

 忙しくなるなーと一応主人公なフランシスがぼやいた。
 同じくらい登場が多くなるだろうアーサーはスケジュール帳を片手に顔を青くしている。

「というわけでボヌフォアさん」
「ん?何?」
「フランスに行こうね。今から
「・・・・・・今から?」
「今から」
『・・・・・・・・・・・・』

 ああ、やっぱりこういうオチか。
 誰が呟いたのか、それは今では分からない。

 数時間後、フランスの空港にて「やっぱり監督は監督だった!!」と叫ぶ手荷物のない男性の姿があったらしい。