昼下がりの街中、待ち合わせの定番である時計塔の下。
 春らしい華やかな装いの女性のもとへ1人の男性が駆け寄った。
『よお、待たせたか?』
 男性は片手をあげながら恋人の名を呼んだ。
『ううん。さっき来たばかり』
『・・・・・・』
『どうかした?』
 小首を傾げた女性に、男性は少し言いづらそうに言った。
『いや、可愛い格好してるなぁって・・・』
『・・・ばぁか』




 数メートル離れたビルの陰より。
「・・・あのさ、兄貴」
「なんだ?」
「2人にアフレコするのやめてくれ。こう・・・むず痒くなってくる」
「その前にあの2人はそんな会話しないと思う・・・」
「何言ってんだ。母さんと父さんの会話そのままだぞ?」
「「・・・・・・・・・」」

 バカップルだったらしい故父母。