晩飯何にしようかな・・・

 アメリカとイギリスが飛び出していって、一人残されたフランスは現状確認と言う名の現実逃避を行っていた。

 〜♪〜

 静寂を電話のベルが壊す。テーブルに突っ伏したままだった体をのろのろと起こしたフランスは、出なくてはという信念のみで受話器を手に取った。

『フランス。今すぐ来なさい』

 用件だけ言って切れた電話を無言で見下ろす。
 声と口調からして相手はオーストリアだろう。だが、呼び出される理由どころか場所すら言われていないのにどうしろというか。

 今日は厄日か。

 愛を探す旅に出ようかなと本格的な現実逃避をはじめたとき、再び電話のベルが鳴った。

『フランスか?さっきオーストリアから電話があったと思うんだが・・・』
「ああ、あの来いとだけ言って切られたやつだな」
『・・・やはりな』

 電話の向こうから聞こえてくる喧騒に眉をひそめる。
 何かトラブルでも起こったのだろうか。

『すまないが、これからこっちに来てくれないか?話したいことがある』

 疲れの滲むドイツの声に、フランスは応と答えるしかなかった。

+++

 やってきたドイツの家は暗い方面に賑やかだった。

「もう嫌です。このままオーストラリアになります。カンガルーと一緒に住んで海水浴にいそしみます」
「オーストリアさん!しっかりしてください!」
「落ち着け。頼むから落ち着いてくれ!」

 遠い目をして魂を飛ばしそうなオーストリア。それを励まそうと頑張っているハンガリーとドイツ。

 そして呼び鈴を押しても出てこない家主に痺れを切らして勝手に入った先の部屋で騒いでる一団に、声をかけるタイミングが掴めずに立ち往生していたフランス。

 これ、帰っちゃだめかなぁ・・・。

 本気で帰ろうと決めかけていたフランスに、偶然にもオーストリアの虚ろな目が向けられる。一拍の間をおいて、彼は常にない剣幕でフランスに詰め寄った。

「フランス!なんでイギリスを止めなかったんですか!?」

 胸倉を掴まれながらがくがく揺さぶられて、全く状況把握が出来ずにされるがままになっているフランスをドイツが救出する。

「おいこら。一体なんだってんだ」
「・・・フランス。イギリスが結婚したという話は聞いたか?」

 何でこいつがそれを知ってるんだろうと思いながらも肯く。

「今日言われたけどそれがどうした?」
「知ってるならどうして止めないんですか?!」

 再びオーストリアが噛み付いた。
 いつもの貴族面はどうしたんだ。こっちもなんかムカついてきて叫ぶ。

「止める前にアメリカが反対して飛び出して行きやがったんだよ!おかげで俺、相手も知らないままだよ!?」
「本当に肝心なときに役に立たない方ですね!」
「落ち着けオーストリア。フランス、俺が話そう」

 相次げたドイツはフランスを窓へ誘い、外の庭を見るよう促した。
 外には予想していなかった光景が広がっていた。
 抉れた地面。焼けた植物。焦げた塀。戦場跡地のような庭の様子に呆気に取られ、ドイツを見れば疲れた顔で溜め息が返ってきた。

「テロか?」
「いや、アメリカだ」
「・・・は?」

 アメリカといえばイギリスの妻(?)を抹殺すべく飛び出していったはずだが、それが何故ドイツに?

「・・・イギリスの相手ってお前だったりするわけ?」
「違う」
「じゃあ、オーストリア?」
「違います」
「・・・ハンガリーちゃんじゃないよな」
「違いますよ!」

 最期のは結構本気だった。だってイギリスの奴、最初妻帯者になったとか言ってたし。ああでも男って言ってたか。

「オスト・・・いや、プロイセン兄さんだ」

 別にあいつが同性愛者でも反対するつもりはなかったが・・・って、今なんて言った?

「え?」
「今日知らされたのは俺も同じだ。・・・そのすぐ後にアメリカがやってきて、銃撃戦を繰り広げた挙句に二人ともイギリスに連れて行かれた」

 プロイセンといえばドイツの兄で、今は独立した国ではなくドイツに合併したような形で存在している国だ。イタリア兄弟みたいな感じだな。一時期は一緒に暴れたし、今でも悪友だし・・・。
 あいつイギリスと出来てたのかー。そういや結構仲良かったような気もするな。
 そうかー・・・イギリスとプロイセンが・・・。そういえばあのコンビ前にも・・・前に、も・・・?

 イギリス と プロイセン が?

 現実逃避な回想から戻ってきたフランスはガキンッと擬音がつくような勢いで硬直した。

 イギリスとプロイセン。
 片や七つの海をまたにかけ世界を支配化においた海賊淑女。片や騎士団から始まり当時の大国を押しのけるまでに成り上がった黒き鷲。
 そして皇帝ナポレオンによるフランス絶世期に手を組んで、完膚なきまでに叩きのめしてきた性悪コンビ。
 もう二度とあの二国を組ますな、敵に回すな。というのが周囲国の暗黙の了解となるほどにすさまじい帝王カップル、改め夫婦。

「・・・・・・・・・」

 プロイセンの被害を被った大国代表のオーストリアに視線を向ければ、心中察するというように肯いた。

「止めましょう。なんとしても」
「ああ。悪夢の再来だけは阻止しないとな」

 今まで手を組むことのなかった二国はがっちりと握手を交わした。









 事態混迷編。時代考証なんてしないで下さい。普が居る時点で歴史なんてないようなものです。

 独と普はオーストリア併合の頃に別居始めて、たまに遊びに来ます。
 墺と洪は用事があって来てました。そこに普がやってきて、墺がいるから言いたいことだけ言って(「イギリスと籍入れたから。それじゃ」「何でだ!?」な感じ)帰ろうとしたところに米がやってきて大乱闘。独たちが呆然としているところに英がやってきて回収していきました。独の被害が半端ないです・・・。