「【百年戦争】編撮影終了!皆、お疲れ様ー!!」
「またもや、まだopとedを撮ってないような・・・」
「気のせい気のせい。それじゃ、カンパーイ!!」

 誰かの不安を滲ませた呟きを無視した監督の音頭で、慰労会は始まった。






 普段ならカメラやコードに埋め尽くされているはずの撮影所。
 それが今では布団と机の群生に占拠されている。布団の上の板(天板というのだと本田さんが教えてくれた)に載せられているのはコンロと土鍋。

「炬燵に鍋・・・。ここ、撮影所なのに・・・」
「深く考えるな、セーシェル。少し早い忘年会って思っとけよ」
「これなら酔って大騒ぎになる前に寝ちゃうからねー。てか、もう出れない」
「前回の映画撮影後の打ち上げは大騒ぎでしたからねぇ・・・。それなりに考えたんでしょうね」






「つくね入れますね。あ、カニはもういいですよ」
「カークランド、俺がやるから食べときー」
「お魚くださいですよ!」
「ん」

 フェリクスにつくねの入ったケースを取られたアーサーは、その代わりとばかりに差し出されたピーターの器を受け取った。

「フェリー。炬燵の中にネコがいっぱいー」
「ネコ・・・寒いって・・・」
「お前の仕業か、カルプシ!」


 



 バックに黒いオーラを漂わせたローデリヒ。
 お前そんなキャラじゃないだろうというツッコミを入れる者はこのテーブルにはいなかった。

「ヴァルガス。シュヴァリエ。絶対に食材や調味料に近づかないで下さいね」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「エーデルシュタインさん、凄い迫力・・・」
「んだ」
 





「兄貴の隣がよかったのに」
「ロヴィーノがおるとフェリシアーノを止められんで闇鍋化するやろー」

 闇鍋化対策の一環としてフェリシアーノと別のテーブルにされて不貞腐れるロヴィーノの頭をアントーニョが撫でる。

 その向かいでは、エリザベータが別の方向に頑張っていた。精一杯頑張っていた。

「ル、ルートヴィッヒさん!あ、あの、た、たれはっ・・・・・・」
「えっと・・・ゆず入りのやつくれるか?」
「は、はい!」

 




「ルッソちゃんってなんであれであれなのかしら」
「言ってる意味がよく分からないんだぜ」

 カニの足と格闘していたルーシーの唐突な言葉にヨンスは首をかしげた。
 察しの悪い弟分の言葉に溜め息をついた王が彼女(彼?)の言葉を補足する。

「ヘーデルヴァーリがあんなに分かりやすく逆上せ上がってるのにどうして気づかないのかってことヨ。あの鈍感、赤面して挙動不審なヘーデルヴァーリよりも異物混入寸前のローデリヒの鍋のほうが気になってるネ」
「「・・・・・・・・・」」

 王の不穏な言葉に促されるようにローデリヒのいるテーブルを見れば、ベールヴァルドとティノが2人がかりでシュヴァリアの持つ謎の液体が入った容器を取り上げていた。

「・・・青汁?」
「バジルソースじゃないかしら?」
「どちらにせよ鍋に入れる物じゃないネ」






「どうぞ、イヴァンさん。ライヴィスは苦手なものある?」
「えっと・・・春菊は食べれないです」
「あ、僕も苦手ー」

 ほのぼのとした空気が実に微笑ましい。
 リリは見ているだけで楽しい職場というのは貴重なものだと思いながらふと隣席の弟に目をやった。

「・・・バッシュ。貴方が食べてようとしているの白菜じゃなくてバレンですわよ」
「・・・あれ?」