芸能活動とはプライベートのない仕事だ。
 街を歩けば人が寄ってきて騒ぎ、私生活には仕事という名目で複数の目が付きまとい、不用意な行動をすれば文字や映像にされて叩かれるは喚かれるはで、俺の人権はどこ?って一度は思う。
 うっかり声にすると売れない人たちから非難と嫉みの目で見られるからそれにも気をつけなくちゃいけない。

 少し前まで普通の・・・普通?あれ、普通の分類でいいのかな?

 まあそんな疑惑は湧くものの、その辺に居る高校生だったのは違いないアーサーが、いきなり芸能界に入ってそんな複雑で理不尽な事情を理解しろって言うのはまだ難しいのかもしれない。
 だけどね、アーサー。

「いらっしゃいませー」

 お手本のような笑顔で来店の挨拶をした店員の顔を見、俺とイヴァンはかなりのマヌケ面で一切の動きを止めてしまった。

「・・・・・・」
「あれ?アルフレッドさんにイヴァンさん。お久しぶりです。オフですか?」

 人気上昇中の若手俳優が喫茶店のレジ係してるなんて普通ないから!
 もし俺が雑誌の編集長とかしてて、部下が「アーサー・カークランドが喫茶店でバイトしてます」とか言われたら数回聞き返した後に事実確認を何度もやらせるね!
 てか、よく雇ってもらえたね。え、ここ友達の親がやってる店なの。・・・いや、給料はもらってないとか校則がどうとかいう問題じゃなくてね。

 ああ、もう、誰か代わりにアーサーに説明してくれ!