この時期になると、アーサーの周囲は俄かに騒々しくなる。

「カークランド、今年も頼む!」
「ん。去年と同じでいい?」
「あ、アーサー。ちょっといいか?」
「いいよ」
「カークランドー、今年もお願いできるか?」
「いいですよ。いくつですか?」

 すっかり馴染みになっている同級生や先輩から、噂を聞きつけた後輩まで彼らの目的はただ1つ――ホワイトデーのお返しとしてアーサーの手作り菓子を入手することだ。人によっては彼女の断固たるお願いによってやって来た者も居る。

「毎年この時期は人気者だな」
「あはははは・・・」

 元々はエドワードが毎年のホワイトデー前に金欠で呻く(付き合いの多い彼にとって軍資金がないことは重大な問題なのだ)のを見かねて、安く多く作れる菓子を一緒に作って配ったのが始まりだ。
 それがいつのまにやら一種の期間限定販売っぽくなっているのはどうしてだろう。

「で、エドはどうする?」
「もちろんよろしく頼む」
「はいはい」

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