日本、曖昧な笑顔とともに棒読みで。
 他のG8メンバー、困惑と驚愕の表情を浮かべる。
「あー皆さんおまちしてましたよ・・・お元気そうで何よりで・・・」
 カナダ、ほっとした表情で。
「あっまだ始まってなかったんだね。どうもどうもー」





「はいカット!今日の撮影は終了!皆、お疲れー」

 「おつかれさま〜」と椅子から立ち上がったイヴァンの足元はよろよろとしていておぼつかない。隣に立っていたナターシャは慌てて長身の彼の体を肩を掴むことで支えた。
 
「ちょっとぉ、だいじょぉぶぅ?徹夜?」
「うん・・・昨日まで試験期間だったから・・・」

 一度は立ち上がった椅子に座るように促し、頭が近づいたことで見やすくなったイヴァンの顔を覗き込む。
 そうしていると共演者や『ちびたりあ』収録組などがわらわらと集まってきた。

「学生は大変ねぇ」
「顔色が悪いですよ。足元も危ないですし・・・今日は車で来ているので、送りましょうか?」
「ロディ、それは労りじゃなくてトドメだ」

 おそらく完全な好意から言っているのであろうローデリヒの言葉を彼の運転技術をよく知るルートヴィッヒが間髪いれずに止める。自覚のないローデリヒはなんのことだと言わんばかりの表情だが、この場に色んな意味でのフォローを入れようとするような精神の持ち主はいなかった。

「僕、近くまで一緒なんで送って行きますよ」
「え、いや、エドァルド。そんなことしなくても大丈夫だよ」
「どこがですか。化粧で隠してるつもりなんでしょうけど、隈が酷いですよ。大人しく送られてください」
「でも・・・」
「イヴァンちゃん。こういうときは甘えときなさい?」
「え、えっと・・・じゃあ、お願いします」







「・・・ねえ」

 イヴァンがエドァルドとナターシャに引っ張られるように帰宅していくのを見送っていたアルフレッドは、撮影セットの本棚から『お疲れのあの人に作ってあげよう!滋養強壮メニュー〜野菜メイン〜』を取り出していたアーサーに声をかけた。

「なんですか?」
「俺も徹夜明けなんだけど・・・」
「そうですか。早く帰ってゆっくり寝てくださいね。寄り道とかしちゃだめですよ。ゲームや漫画なんてもっての他ですからね」
「・・・・・・」

 何かが、何かが違う・・・!
 アルフレッドは心の底からそう思ったという。