常々思うことだが、何事にも程々という限界は必要だ。

「どうすりゃここまでこうなるんだ・・・」

 ローデリヒと連絡が取れないというマリアの相談を受けてローデリヒ宅を訪れたギルベルトは、合鍵で入った先に予想通りの光景が広がっているのを見て深々と溜め息をついた。

 部屋の天井ギリギリまで積み上げられた本(どうやって積んだんだ)。
 床が隠れるほどに散らばった紙(その大半は楽譜のようだ)。
 食べ終わったインスタント食品や栄養補助食品が放り込まれたゴミ袋(この点は昔よりも進歩したと言える)。

 この光景を作った当の本人は、キーボードスタンドの下で熟睡していた。
 何処でも寝れるというのは一種の特技だろうが、ネコのようなアクロバティックな寝姿を披露する必要はないだろう。

「・・・いや、ネコっつーよりタコだな」

 こいつはネコみたく可愛くねぇ。
 
 そう結論づけたギルベルトは、ネコ改めタコを起こすために床に放られていたシンバルを手に取ったのだった。