「いーやーでーすーよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」



 帰る前に挨拶をしておこうと撮影所に入ったティノを迎えたのは、子供の涙混じりの悲鳴。
 何事かと振り向けば、セットの狭い隙間から引きずり出されようとしているピーターと、暴れる子供を押さえ込んで抱き上げようとしているアーサーが居た。

「・・・・・・演技の練習?」

 いや、今日の撮影はもう終わりだし、暫くはイギリスとシーランドが絡む話はないはずだ。

 アーサーがピーターに何かを言っているらしいことは見て分かるが、何を言っているかはピーターの声に遮られて全く聞き取れない。
 喧嘩でもしたのだろうか。

 ふと視線をずらせば椅子に座ってぼーっとしているベールヴァルドが居た。
 ・・・・・・他の人には分からないだろうが、すごく和んだ表情をしている。

「・・・どうしたんですか、あれ」
「永遠の戦い」
「はい?」
「歯医者を嫌がる子供と保護者」
「ああ・・・」