「みんなー!飲むでー!!」
『いえーい!!!』

 少し前に本田さんが帰省のお土産として買ってきた一升瓶を片手に持ったカリエドさんの音頭に、大人たちがハイテンションで呼応するのを俺は見守るしかありませんでした。

 


 あ、自己紹介が遅れました。今回の実況はアーサー・カークランドが務めさせていただきます。
 ただいま、ドラマ広告用ポスター撮影のためにとあるビルの屋上にいます。なんでも、日の出をバックに皆が乾杯している光景を撮りたいんだそうで・・・。

「気温3度で野外撮影とかアホかー!!」
「わいの衣装、半袖やっちゅーねん!耐えられるかー!!」
「日の出の時間が曖昧だからあらかじめ待機って、何考えてんだー!」

 えー・・・皆さんの不満の原因は上記の会話で察していただけたかと思います。ここがオフィス街じゃなければ、ご近所さんから苦情が来ていたことでしょう。歌手も兼ねる役者の肺活量はビル風なんかには負けないのです。

「おら、飲め!」

 あ、エドァルドさんが口に瓶を突っ込まれた。助けに・・・・・・ナターリャさんが行ったからいいか。

「57番、アルフレッド。”カナダ”で”アメリカ”のセリフをいいます!」

 ・・・・・・何時の間に1〜56の発表があったのかが疑問です。
 なんなんでしょうこのハイテンションっぷりは。止めるべきか止めざるべきか・・・。
 っていうか、なんで撮影用の飲み物に本物のお酒が用意されてるんですか。監督のお茶目ですか。そうですか。

「明日は皆さん二日酔いかなぁ」

 さて、二日酔いには何を食べさせたらいいんだろうか。
 前に本田さんが二日酔いにはシジミ汁だと言っていたような気がする。
 ・・・・・・シジミってなんだろう。

「ねえ、ライヴィスくん」
「はひ?」

 隣に座っていたライヴィスの名前を呼ぶと、彼は涙目で舌を突き出していた。飲んだココアが熱かったらしい。

「シジミってどこで売ってるかな?」
「・・・確か、シジミって貝じゃなかったですっけ?」
「じゃあ、魚屋さんかな」

 まあその前に撮影が無事に終わるかが問題だ。
 
「もう一回とかやだなぁ・・・」
「大丈夫ですよ。みんな、プロですから」
「・・・・・・そうだね」

 プロとしてこの体たらくはいいんだろうか。という疑問は口に出さないで、せめてもの慰めにと何故か(理由なんて今までの監督の所業を思い起こせば分かりきっているけど)動き続けている撮影カメラの音声スイッチを切ることにしました。