「あの、アーサーさん。ちょっといいですか?」
「んー・・・?ああ、ライヴィスくん。どうしたの?」

 読んでいた『職場で配る。持ち運びしやすくてたくさん作れるチョコ菓子レシピ』を脇に置いたアーサーは歳の離れた友人の顔を覗き込んだ。

「今年もバレンタインのチョコ、作るんですか?」
「そうだよ。何?リクエスト?」
「え、えっと、あの・・・えっと・・・」

 甥っ子のピーターと違って遠慮がちなところのある――イヴァンやエドァルドには一転してちゃっかりしているのだが、アーサーはそれをみたことがない――ライヴィスが頼み事をしてくるのは珍しい。
 
「遠慮しなくていいよ。無理だったら無理って言うし」
「は、はい。あの・・・虫チョコって作れますか?
「・・・・・・・・・・・・What?」