今年のホワイトデーは日曜日であり、前日に十分な時間をとって準備することが可能であった。

「なので、早朝からで申し訳ありませんがお邪魔してます」
「・・・・・・・・・いらっしゃい」

 アルフレッドを”おいしい昼食”というエサで釣ったアーサーは朝早くから中身のぎっしり詰まったスーパーの袋と共にボヌフォア宅を訪れていた。

 朝食を食べるフランシスに事情を説明しながらもその手は忙しなく動いている。

「かくかくしかじか〜ということがありまして。結局はチョコを虫の形にすることで落ち着いたんですが」
「ああ、そう・・・」
「どうせならピーターにも作ろうかと思って。だったら内緒にしておきたいじゃないですか」
「それでうちな訳ね」
「だからってブロックチョコで彫刻しなくてもいいんじゃないかい?」

 変なところで拘る性格なアーサーは自身のスキルをフル活用としてブロックチョコの1本彫りをしていた。
 テーブルの上には造形の一部が崩れたカブトムシの成れの果て(材料:チョコ)が積み上げられている。
 失敗した奴は後で溶かして撮影所で配るお菓子にするらしい。

「型を作って、チョコ溶かして固めたほうがいいんじゃないか?」
「俺はそれを手作りとは呼びません。というか、それじゃあつまらないじゃないですか」
「君、それが本音だろ!?」