ロケバスでの移動時間は貴重な睡眠時間でもある。(それと同時に茶目っ気のある面々によるイタズラ時間でもあるのだが、そこは割愛したい)
 椅子からずり落ちそうになりながら寝ている者。
 ネコのように丸まって寝ている者。
 隣に凭れ掛かって寝ている者。さらにはそのままずり落ちて膝を枕どころか布団にして寝ている者など様々だ。

 そんな中でも一番目を引くのは本田だろう。
 バスの座席のような不安定な場所で寝る場合、人の体は安定を求めて傾くものだ。しかし、彼は背もたれに凭れ掛かってはいるものの、正面を向いた体勢で全く動かない。
 更に言えば、寝言もいびきもなく、息をしているのかすらぱっと見ではわからない。

「てか、よく見ても分からないよな」
「これはあれだ、眠るように死んでいる」
「違う。死んだように眠っている、だ」
「・・・・・・実は死んでたりしてないよね?」
「・・・・・・・・・」

 一抹の不安がよぎるロケバスの夜であった。