朝は自然に目が覚める。低血圧だから意識が目覚めるまでは時間がかかるのが難だ。

 ぼーっとしながらキッチンに入ると、すぐ上の兄であるガヴェインが冷蔵庫を漁っていた。
 昨晩遅くなると連絡があったが、この様子では先ほど帰ってきたらしい。

「おはようアーティ」
「おはよ・・・おかえり」

 寝癖のついた髪を撫でながらガヴェインがアーサーの額に口付けた。兄弟にしてはいきすぎなスキンシップも、子供の頃から慣れているアーサーは平然と受け入れる。
 なお、以前遊びに来ていたアルフレッドがこの光景を目撃したときは、飲んでいたコーヒーを思い切り噴出したという。

 朝食を食べるかと聞けば肯定が返ってきたので、スープだけ先に作ることにする。
 昨日はコンソメだったから今日はポタージュだ。後はサラダと目玉焼きに、チキンを挟んだサンドイッチ。

「兄さんたちは?」
「パース兄さんは仕事。ケイ兄さんは大学が遅いからもう少し寝てるって」

 洗濯機をセットして、干すのは出るのが遅いケイに任せて家を出る。

 高校までの道を歩いていると後ろから強い力で叩かれて息が詰まった。

「おはよう、アーサー!」
「・・・・・・エド」

 振り向けば友人のエドワード・ウッドストックが笑っていた。朝から元気だ。

「これこの前のノートな」
「ああ、ありがとう。いつもごめんな」

 板書の写されたルーズリーフの入ったファイルを渡される。
 ヘタリア収録が始まってから休んだり早退したり遅刻したりで碌に授業が受けられないから、彼の助けは非常に有難いが同時に申し訳ない気持ちにもなる。
 そんなアーサーの考えに気づいたのかエドワードは笑ってアーサーの背中を遠慮なく叩く。

「そんなに気にすんなって。今日も撮影か?」
「いや・・・今日はないけど・・・」
「じゃあ放課後、付き合えよ。それでちゃらだ」
「・・・ん」