『Axis Powers Hetalia』。

 通称『ヘタリア』。

 国を擬人化したという異色の作品で、歴史やジョークを題材にした話をアニメとドラマのオムニバス形式で放送する。
 原作は日本でしか出版されていない本だったのだが、それに惚れ込んだ某大御所俳優が知り合いのプロデューサーに話を持ち込んだのが始まりらしい。
 キャストは発端となった大御所からアーサーのようなスカウトされた一般人まで無節操、中には一人二役の人もいるとか。

 とりあえず主要メンバーで一足先に顔合わせをするから来てくれと呼び出されたのは、都内のTV局内にある会議室。
 言われていた時間よりも少し早くに着いたアーサーが部屋のドアを開けて最初に見たのは、チャイナ服を着て長い黒髪を首の辺りで括った人が10数個はあるだろうリンゴでジャグリングをしている光景だった。

「・・・・・・」

 一度ドアを閉めて、入り口の上に付けられている札を見上げる。

 ・・・間違ってないよね?



 顔あわせ



「ようこそ。『ヘタリア計画』推進本部へ!」
「は、はあ・・・」

 再度ドアを開ける事ができずに立ち往生していたアーサーを部屋に引き込んだのはやたらにテンションの高い人物だった。今回のドラマの監督だと名乗った彼は、円滑な人間関係のために各人に自己紹介を兼ねた一芸を披露してもらっているのだと説明してくれた。

「一芸、ですか」
「そう。フェリシアーノくんみたいに歌ってもいいし、王さんみたいなプロの芸でもいいし、本田さんみたいに円周率を5万桁言ってもいいし」
「・・・・・・」
「なんならアルフレッドくんがした、コーラ1リットル一気飲みなんてのでもいいよ」
「・・・・・・」

 兄さん。芸能界って凄いところですね。
 俺は早くも挫けそうです。