『件名:うちでいいですか? 本文:フランシスにメールしたんですが返事がありません。どうやら携帯の電源を入れていないようです。シャルルさんに聞いたところによると、今日は休みの日なので遊び歩いているのではないかということです。アルフレッドは昨日から家に帰っていなくて何処にいるか知らないと言っていました。』 「・・・なんであいつはメールだと敬語なんだ?」 順調に撮影が終わって確認したメールの内容は、ようするに『フランシスをとっ捕まえて連れて来い』ということだった。 「『了解』・・・っと。さーて、あいつの居そうな場所というと・・・」 寂れた商店街の一店舗にある、椅子と本棚だけが置いてある昔懐かしい漫画喫茶。カウンターの椅子に座る店主に軽く頭を下げると、無言で2階へ続く階段を指し示される。 2階には並んだ本棚の奥に隠れるようにあるソファーを占領して悠々と寝転がる男の姿があった。 「フラン」 名を呼ぶと、ソファーの外に投げ出されていた手が顔に乗せた雑誌を持ち上げた。 「んー?あー・・・ギルか」 浅くだが眠っていたらしいフランシスは数度瞬きを繰り返し、声をかけてきたのがギルベルトだと分かると、上半身を起き上がらせて出来た隣のスペースに座るよう促す。 「よくここが分かったな」 「ロディ探しで培った人脈とフットワークの軽さを舐めんな」 「それって威張れることかなぁ・・・」 「ほっとけ。で?今度は何したんだ?」 「いやぁ・・・」 照れたように頭をかくフランシスに向ける目は冷ややかである。 彼が行方をくらませるときは大体スキャンダラスな事に巻き込まれているのがお約束なのだ。 「最近、別れた子がナイフ持って帰り道に潜んでるから帰れなくて☆」 「一度刺されればいいのに」
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