昼過ぎの人がまばらになった談話室のソファに座って、カバンから耳に引っ掛ける形のヘッドフォンを取り出した。
 MDの中身は贔屓のバンドの曲ではないまだ耳に慣れない音だ。
 じっとその音に聞き入っていると後ろから肩を叩かれた。

「アルフレッド君。おはよー」
「おはようイヴァン」
「何の曲聴いてるの?」
「・・・次の、新曲の」

 遠い目をしたアルフレッドに言いたい事を読み取ったイヴァンも似たような表情を浮かべた。

「前回、大変だったよね・・・」
「ああ・・・」

 短期間に立て続けにCDを出すほど好評なのだから喜ばしい限りではあるが、役者側からしてみれば苦労の連続だ。
 菊ぐらいの大御所になると大抵のことはこなすが、アルフレッドなどの経験が浅く役者が本職のメンバーは普段の撮影に歌唱練習が加わることになって大忙しである。

「今度はロシアの曲はないんだろう?」
「うん。バルト+ポーランド中心なんだって。PVにはでるけどね」
「いいなぁ・・・」
「・・・本当に頑張ってね」

 本気で羨ましそうなアルフレッドにイヴァンは苦笑いしながら声援をむけた。