ずっと恋焦がれてた。
 永い間傍に居たいと思っていた。
 気持ちが通じていると分かっていて、愛されていると知っていて、それなのに許されない関係だった。

 帰ると言うアメリカを玄関まで見送ったイギリスはリビングに戻ってくると、プロイセンの背に顔を埋めるように凭れ掛かって深く息を吐いた。
「大丈夫か?」
「ん・・・安心しただけだ」
 周りに反対されることは分かっていた。
 イギリスとドイツは先進国で、その影響力は半端ではない。その二国が個人的にとはいえ密接な関係になるのは問題が多い。・・・例え胃が痛むとか心臓に悪いとかそういった理由であっても、だ。
「ヨーロッパの連中はさ、まだいいんだよ。この平和な時代に本気で引き離そうとまではしないだろうし・・・ただ、アメリカは、あいつだけは・・・」
 イギリスの弟。彼女の意思を変えることの出来る数少ない存在。彼女のためならどこまでも冷酷になれる子供。彼が本気で反対してきたら、諦めるしかなかった。
 実際のところ、誰よりも傍で2人の関係を見てきたアメリカが本気で反対すると思ってはいなかった。ただそれでも、心の奥の方で、『弟に反対される』という恐れが巣食っていた。
「だから、よかった」
「・・・そうか」
 イギリスが背から離れたのを見計らって振り向き、その痩躯を腕の中に閉じ込める。
 抱きしめて、キスして、抱いて。それでもずっと続いていた飢えは、ようやく満たされる。
 女や男である以前に自分たちは国だ。国民のためには感情すら殺す。今までそうやって生きた。時には刃を交え、時には手を結んで。心を見ない振りをして生きるのが一番楽だった。だけどもう、その必要はない。
「イギリス」
「何?」
「・・・俺で、いいんだよな?」
 緑色の目がプロイセンを見上げる。澄んだ新緑のような、昔からずっと変わらない、自分の愛した色だ。
 プロイセンの胸に当てられていた腕が動いて、顔に伸ばされる。そっと髪に差し込まれた指はこめかみを伝い、頬に添えられた。
「もう放すことなんて出来なくなる。・・・それで、いいんだな?」
 らしくもなく情けない表情を浮かべるプロイセンの唇に指を這わせて言葉を止める。
 それは自分の言いたい事だと言おうとして、少し迷ってから顔を寄せた。軽く触れるだけのキスをして、赤くなった顔を肩に埋めて隠す。
「・・・これじゃ、だめ?」
 今更言葉なんて出尽くしている。ましてや自分は嘘を武器にしてきたのだ、言葉より行動が真実だ。
 反応のないプロイセンに、駄目だっただろうかと心配になっていると、肩を引かれて床に押し倒された。後頭部と背に腕を回されて、深いキスを仕掛けられる。
「ん・・・う、ふ・・・」
 舌を絡ませられての息を奪うような口付けに苦しくなって背を叩けばようやく体が離された。
「上出来だ・・・愛してる。イギリス
「俺も、愛してるよ
 心からの告白は、互いの吐息に溶けて、消えた・・・。









えー・・・ここから先の展開はいわずもながです。書く勇気なんてありません。
にしてもイギリスがデレ100%でツンデレの片鱗もないんですが・・・プロイセンもなんか性格違うし・・・
・・・・・・・・・・うん。愛は人を変えるということで。