老朽化したコンクリートの建物をバックに、死霊ちゃん型マイクを持ったアルフレッドがスポットライトを浴びながら高らかに叫んだ。

「やあ、”ドキドキブルブル冬のホラースポット巡り”スタジオ収録の皆さん!病院担当のアルフレッドだぞ!ちなみに今の気温は真冬日一歩手前の1℃だ!」
「さっき見たら0.5℃に下がってたぞー。ボンソワー、フランシスだ。それとアーサーだな」
「こ、こんばんは・・・」

 アーサーを引っ張るようにしてフランシスがカメラの前に入ってくる。

「俺たちが紹介するのは郊外にある医療ミスで潰れたと噂されている廃病院だぞ!」
「見るからに幽霊でそうだよなぁ・・・。それはそうとアルフレッド。なんで俺たち豚汁片手にロケやってんだ?」

 カメラがフランシスが持っているコップ(豚汁入り)をズームで映す。

「ここに来る途中で買ったんだ」
「・・・インスタントを?」
「ううん。材料。んで、本田センパイに包丁とまな板を借りて、アーサーが作った」
「後でスタジオに戻ったときに返す約束なんです」
「・・・・・・・・・」
「ちなみにメニューはアルフレッドさんのリクエストです。鍋は小道具で・・・あ、赤味噌がよかったですか?」
「いや、いいよ。うまいよ。あったかいし。ここ外だからホッカイロ代わりになるし」

 だけどここホラースポットで、これからそこで怖い話しないといけないのにこの始まりはどうよ?

 カメラのレンズから視線を動かしたフランシスには、スタッフ一同が同様に豚汁を食しているのが見えていた。