7月4日。
 それは米国合衆国の独立記念日であり、アメリカの誕生日だ。
 大国であるアメリカの誕生日は毎年友好国などを招いてのパーティーになることが恒例で、その裏には国同士の調和を取ろうとする思惑が介在している。
 そんなことは承知しているアメリカだが、誕生日というものは心が躍る。
 特に、ここ最近はよい出来事など皆無に等しかったため、久々のイベントにテンションも上がるというものだ。

 例え、パーティー会場が準備スタッフが全員席を外していた隙に色とりどりの草花で文字通り埋め尽くされ、ドアを開けた瞬間に雪崩落ちてきたそれらに埋まろうともだ。

 むしろこれがなくては今日という気がしない。

「そうだよね、フランス!」
「いやぁ、どうだろうねぇ・・・」

 部屋いっぱいに詰め込まれた草花を全て撤去するのは時間と手間がかかるということで急遽庭での開催になったのだが、先ほどから花びらが空から降ってきてはテーブルや人の頭上に積もっている。
 凄くメルヘンな光景だ。これで空に花びらを載せたヘリだとか、建物の屋上に花びらを噴出す装置だとかがあればなんの気負いもなく楽しめただろうが、残念ながら100%不思議現象である。つまり、犯人は1人しかいない。

「摩訶不思議国のバカー!!」
「坊や、いい子だか叫ぶのはやめようねー」

 米国では(外見だけとはいえ)19歳は飲酒禁止だということでコーラ片手にフランスに食って掛かるアメリカは態度だけなら丸っきり酔っ払いだ。

 7月4日。それは米国合衆国の独立記念日であり、アメリカの誕生日だ。そして同時に、SHKの面々による嫌がらせなんだか祝福なんだか分からないイタズラの開催日であった。

 去年はアメリカの寝室以外の部屋が氷とアイスクリームとペンギンで埋め尽くされていた――アイスはパーティ参加者で分けて食べて、ペンギンたちには丁重に自然に帰っていただいた。

 一昨年はパーティ会場の入り口に『Danger Zone! by SHK』という張り紙がしてあって、特殊部隊が来るまで立ち往生させられた――ちなみに室内には何の仕掛けも無く、張り紙が嘘だと知ったときの敗北感はかなりのものだった。

 一昨々年はパーティに参加した国が使用した車と飛行機の内装が日本の漫画のキャライラストで埋め尽くされ、ステレオのBGMも全てアニソンに入れ替えられていた――国内で日本の漫画が人気を誇っている国は、イタズラだと気づかず喜んでいた。

 普段の彼らの所業に比べれば、多少の精神疲労は伴うが、お茶目だなーの一言で済ませられないわけじゃない。

 むしろ、かなり遠まわし且つ歪んだ形ではあるものの、祝ってもらえてよかったんじゃなかろうか。
 同じ7月に誕生日があるのにスルーされているフランスはそう思ったが、口には出さない。だって間違いなく愚痴が悪化するから。
 ちなみにアメリカより先に誕生日を迎えるカナダはクレマチスの花束をもらったらしい。

「次回はどうなるんだろうねー」
「・・・来年はフランスの家でやってあげるよ!」