西のほうにある大陸を見に行くと言って出て行き、久しぶりに帰ってきた友人は出かけるときは絶対に持っていなかったものを抱えていた。 「・・・アーサー・・・陛下・・・」 困惑しきった顔と表情で自分の名を呼んだドレークの手に抱かれているのは紛れもなく赤ん坊だった。隣にいるエリザベスと共に驚いた表情でそれを見つめる。 「エル・・・どこのご婦人を孕ませたんだ・・・?」 「・・・俺の子じゃ、ない」 「あらあら、ちゃんと認知しておあげなさいな」 「本当に違う!」 びくっ 「うわあぁぁぁあああん!!」 ドレークの声に驚いた赤ん坊が目を開けて泣き叫ぶ。 「元気な子ねぇ」 不器用な手つきのドレークからエリザベスが赤ん坊を受け取った。軽く背を叩いてあやすが泣き止む様子はない。 深く息を吐いて椅子に座ったドレークに水を渡してやると、礼を言って一気にあおった。 「真剣に聞くが、あの赤子はどうしたんだ?」 「大陸から帰る船にいつの間にか乗っていてな・・・寝ているときはいいんだが、起きれば疲れて泣き止むまでずっとあの調子なんだ・・・」 よく見れば目の下に隈が出来ている。海に放り出すことも考えたが、身分のある人物の子供だった場合面倒なことになるのは確実だ。それにアーサーや女王にその所業がばれたら数日は説教地獄に叩き込まれるだろう。 そんなこんなでとりあえず連れて来たわけだ。 「アーサー。貴方、抱いてごらんなさいな」 「は?」 泣きやまない子をあやしながらもドレークの説明を聞いていたエリザベスは、唐突な提案に目を見開いて固まったイギリスに赤ん坊を差し出した。 ほぼ反射で受け取って、かつて上司の子の面倒を見たときのように抱き込めば、赤ん坊はしゃくりあげながらも泣き叫ぶのをやめた。 「・・・え?」 「ほう・・・」 泣きやんだ子にドレークが感嘆の声をあげた。エリザベスは満足そうな表情で赤ん坊とイギリスを見つめている。 小さな手が自分に向いて伸ばされるのを呆然と見つめていたイギリスは、ふと感覚に引っかかるものがあってドレークのほうを向いた。 「こいつ、どこから乗ったかわかるか?」 「ああ、西の最近見つかった大陸だ。名前は、アメリカ」 「う?」 くるりと赤ん坊がドレークを振り返った。しかし視線が合うと怯えたように顔を前に戻してイギリスにすがりつく。 「アメリカ・・・お前が、アメリカか」 「あう!」 今度は嬉しそうに声をあげて赤ん坊が応える。ほにゃりと浮かべられた笑みに、自分も微笑を返してドレークとエリザベスを見た。 「こいつ、国だ」 あらまあというのんびりとした声と捨てなくてよかったと言う安堵が同時に返ってきた。 「だから元に戻し「あら、育てておあげなさいな」 今、凄い発言を聞いた気がする。 「・・・・・・えーと、ベス?」 「まだ話せない赤ん坊なんだし、貴方に懐いてるし」 「いや、国は成長とかにおいては人とは違っていて」 「知ってるわ。だけどこの子を放っておくのも気になるじゃない」 国を育てるのはともかく、それを自分がするのか?しかもこの時期に? 「それに属国にするという建て前だってあるわ。ね?イギリス?」 言いたい事は多々あれど、にっこりと微笑む女王陛下に逆らえるイギリスではない。 渋々肯いたイギリスの肩をドレークが叩く。 「まあ、がんばれ」 「誰のせいだと思ってるんだ・・・」 そして親ばかの道を進む。 いろいろと時代的にありえないんですが、まあパラレルということで。 エリザベスがイギリスに赤ん坊を渡したのは、イギリスに面倒を見てもらっていた時期があったからということで。 |