「抱かしてって言ったらどんな反応するかなぁ・・・?」 「・・・・・・ひかれるんじゃないか?」 「何度も言ったらいいよって言ってくれないかな」 「ていうか君、イギリスを抱きたいのかい?」 物好きだなぁと呆れた声でアメリカが言った。 少し体感温度が下がった気がする。 唐突なロシアの抱く発言が疑問系じゃないこととか、見た目はいつも通りな笑顔を浮かべているアメリカの目が笑っていないこととか、気にはなるけどツッコめるような状況じゃない。 せめてテーブル席にしておけばよかったと後悔してももう遅い。 右にロシア。左にアメリカ。間は俺です。なんだこの席順。嫌がらせかよ、おい。 それもこれもイギリスのせいだ。ちくしょう。 @@@ イギリスの爆弾発言から始まり、露受けの需要についての考察からヨーロッパ・アジアのカップリング談義に至って、仕舞いには写真交換大会となった日英コンビの会話は室内をカオスに仕立て上げてしまった。 内心の混乱を精神力で押し切って会議の閉幕を叫んだドイツの偉業には惜しみない拍手を送ってやりたい。 他国に比べれば遥かに空気を読むスキルに長けているはずのあの二国が周囲を放置してあそこまで突っ走るとは、『萌え』恐るべしといったところだ。 話し足りないから夕食でもどうだと言いながら退室していった二国を見送って、ホテルに戻って休もうと思っていた俺は同方向から違う声によって名を呼ばれて振り返ることになった。 「フランス・・・」「フランス君」 「・・・なに?」 視線の先にはロシアとアメリカ。 凄く珍しい――むしろ初めてではないだろうか――なコンビはある意味先ほどの日英コンビより嫌な予感を抱かせてくる。 しかし長い年月で培われた防衛本能に従って逃げようとしたフランスの行動は、両方向から伸びてきた腕によって阻まれた。 「ちょっと付き合ってくれないかい?」「少し飲みに行かない?」 お前ら、これは誘いじゃなくて連行だ。 (以下、フランスの実況・解説でどうぞ) 先制アメリカ。 「君さ、これ以上イギリスに付きまとわないほうがいいんじゃない?」 「えーアメリカ君には関係ないでしょ」 「そうかな?彼は俺の友好国だよ。・・・イギリスに取り入って何するつもりだい?」 「何もしないよ。ただお茶してお喋りして膝枕してもらってたまに泊まって帰るだけで」 「へぇー」 イギリスが膝枕・・・。昔はよくアメリカにしていたなぁ。 アメリカの手の中で遊ばれていた殻付き胡桃が中身ごと無残に砕かれる。 うーん。ややロシア優勢? てかイギリス。お前何やってんの。言葉だけ聞くといちゃついてるように聞こえるんですけど。 「アメリカ君は冗談がヘタだねー。そんなんじゃイギリス君に飽きられちゃうよ?」 「ははは。何をいってるんだい?碌な冗談も言えないのは君のほうじゃないか」 「えー、アメリカ君には負けるよ。さすがXSサイズだよねー」 薄ら寒い笑い声が広がる。 こんなときばっか空気読んでんじゃねぇよ。 てか寒い。ここは寒冷地か。鳥肌たってるんですけど。 「紅茶飲みてー・・・」 声に出すつもりはなかったのに零れた願望は、有難くないことに聞き届けられてしまったらしい。 両側から視線が突き刺さる。 「そういえばフランス君ってイギリス君と仲いいよね」 「いやそりゃ隣国だし」 「でも俺、カナダとか陸続きだけどそんなにしょっちゅう行き来したりしないぞ」 「お前ら仲悪いからな」 「それは君たちもだろう?」 「んーどっちかというと腐れ縁・・・」 「フランス君とイギリス君の間って海だよね。今はトンネルで繋がってるけど」 「うんまあそうだけど」 なんか視線が痛くない? ついでに体近くない? 「前から気になってたんだ。君とイギリスの関係って、何?」 「何って・・・腐れ縁?」 「喧嘩する割には仲いいよね」 ロシア、その手に持ったアイスピックはどこで手に入れたものなのかな? てか何時の間に結託してんだお前ら。最初からこのつもりだったとか!?ロシアとアメリカの癖に!!? 時すでに遅し。逃げ場はどこにもなかった。 @@@ なんとなく雰囲気とノリでベットの上に向かい合う形で正座したイギリスとフランス。 昨晩から今朝にかけての自分の苦労を語っていたフランスはそこで一端話をきった。 「・・・で?」 「で?って・・・そこから後の記憶はない」 酒を飲まされて愚痴られて八つ当たりされて板ばさみにされて――解放されたのは明け方近くだったような気がする。 そして朝食をとっている最中に吐血して運ばれたのだ。他にストレスの理由なんてあろうはずがない。 「つーわけだから、どうにかしてくれ」 「・・・つまり」 「うん」 「ロシアに抱かれてくればいいのか?」 「違うから」 米→英ではないです。ただロシアにとられるのは嫌なだけです。 仏が不幸なのはこのサイトの真理です。 さあ、イギリスはこれからどうするのでしょうか!? |