俺は何をしているのだろう・・・

 今の自分の状況は明らかにおかしいと思いつつも、手の中にある体温を悪くないと思っている自分にもう諦めしか浮かんでこない。

「イギリス君?」

 暖炉近くの椅子にイギリスを座らせて、自分はイギリスの膝に頭をのせるように床に座り込んでいたロシアが顔を上げて伺うように見てくる。

 薄紫の目が常に寂しそうな色を纏っていると気づいた時点で、離れるなんていう選択肢はつぶれてしまったのだ。

「なんでもない」

 苦笑いを浮かべながら薄い鳶色の髪を撫でてやると表情を一変させて嬉しそうに笑った。ふわふわした細い髪はさわり心地がいい。
 絡まったところをうっかり切らないように気をつけながら丁寧に梳いていく。

「ねぇ、イギリス君」
「ん?」
「イギリス君はずっとここにいるよね?どこにも行かないよね?」
「・・・ああ」

 ずっとここに居るよと告げればロシアは恍惚とした表情で目を細めた。

 心のままに表情の変わる様は子供のように無邪気だ。

 腰に回されていたロシアの片手がイギリスの足をなぞるように下りて足首に辿り着く。
 むき出しの足を覆う白い包帯。

「ずっと一緒・・・」

 腱をずたずたにされた使い物にならない足。
 治りかけるたびに新たな傷を加えられて、もしいつか完全に治っても歩けるようになるまで時間がかかるだろう。

 連れてこられて最初にされたことが足の筋を切られることだった。
 逃げないように。どこにも行かないように。抵抗するイギリスを力で押さえつけてナイフで切り刻んだ。

 最初は驚いた。殺意だって湧いた。
 だけど、ずっと傍に居るのだと言って嬉しそうに笑った男に、うっかり絆されてしまったのが今の状況。

 イギリスは歩けない。だからどこにもいかない。
 その事実があり続ける限り、それ以上の危害をロシアが加えることは無い。
 ようするに臆病な子供なのだ。愛情を注いでくれる存在を求めて、でもどうするか分からなくて結局傷つけることしか出来ない子供。だから恐怖以外の感情を貰える事なんて無かった。

 そのロシアがたまたまイギリスを次の相手として選んで、それをイギリスが受け入れた。だから今のロシアは安定している。暖かい手も優しい言葉も望めば望むだけ与えられるから。恐怖を与えることで望むものを奪い取るようなことをしなくていいから。

 本当は傷つけても望むものは手に入らないと知っている。
 だって傷ついたイギリスの足を見るときはいつも嬉しそうな声で泣きそうな目をする。奪ったままでいいのかと恐怖に震えている。
 今はもう、望んでここに居るのだけれど、言葉にしても彼は信じないだろう。

「ロシア」
「・・・・・・?」
「おいで」

 誘われるままに腕の中に収まったロシアの背をゆっくりと撫でてやる。
 強張った体が落ち着くまで抱きしめてやる。

 ずっと続くわけも無い安穏。
 いつ壊れるとも知れない箱庭。
 だけどお前が望むなら、まだ囚われていてあげよう。

 
 

 



 ヤンデレ風味。
 足切り監禁。