雪のちらつくクリスマスイブのNY。
 毎年恒例のアメリカのクリスマスパーティーに呼ばれたフランスは、肌を刺すような寒さにも構わず一人でテラスに出ていた。
 アメリカの知人の別荘を借りて行われているパーティーにはほとんどの国が参加しているが、当然のようにあの3国の姿はない。

 毎年招待状は送っているのだが彼らが応じたことはない。彼らの立場を考えれば当然のこととも思える。
 しかしこういうイベントのときぐらいは参加してもいいのではないだろうか。国連たちが彼らを追うのは国交や立場の問題だけでなく、ただ単純に心配だからという面もあるのだ。
 国が単独行動を取るのは昔ならまだしも、現代においては色々と問題が付きまとう。今現在、世界を纏め上げている国連のバランスが崩れてその弊害があの3国に及んだときのことを思うと不安の種は取り除いておいたほうがいいという結論になるのだ。

 放っておけばいいという意見だってある。イギリスに心酔しきっている英連邦たちはいわずもがな、日本支援を受けている国々は傍観に徹している。彼らなら大丈夫だろうという信頼が透けて見えるのは大変よろしい。

 でも、放っておくわけにはいかない。
 これは国という存在の義務だ。個人の意志は関係ない。

「フランス」

 何時の間にかテラスに出てきていたアメリカがフランスを呼んだ。
 片手に黄色い泡を立てる緑のシャンパンを持っている。(ケーキだけでなく飲み物にまで独特の色彩感覚を発するのはやめて欲しい。というか良く作ったなそれ。)

「カウントダウンが始まるぞ」

 彼らは今日も共に居るのだろうか。
 己を孤独として生きてきた彼らはようやく止まり木を見つけられたのだろうか。

 穏やかな世界で生きていたいと望み、それゆえに全てに背を向けた彼ら。
 背を預けられる存在があると知っていることだけが彼らを傷つけた俺たちの救いだ。

「カウントダウンスタート!10!」

 願わくば、彼らに安らぎと平穏を。