仕事が終わって帰ろうかなーと思っていた矢先に彼に会ってしまったことが運の尽きだった。

「よお、フランシス。これから暇だよな?」

 連れ込まれた喫茶店のテーブル一杯に広げられた写真写真写真。
 被写体はほどんどが決まった3人。全員分が幼少期から最近のものまで揃っている。

 うん。子供はかわいい。兄弟ならなおさら。フランシスにも弟があるからそういった親愛の情はよく分かる。
 だけどこの量は正直、ありえない。

「これが小学校のときので、こっちはスペインに行ったときのやつだな。ガウェインがアーサーを牛の上に乗せてるだろう」
「うん・・・」
「そっちのはケイが誕生日のときのやつだな。あいつは金がもったいないから、ケーキは売れ残りの割り引いたやつがいいと騒いで大変だった」

 俺、何やってんだろ・・・

 意識が遠のくのは決してフランシスの集中力の欠如とかではない。
 弟の写真を持ち歩いてしかもそれ全てについて感想を述べることのできる相手にどう対処すればいいかなんて分かりやしない。とりあえず逃げたら身の危険を感じ続けることは分かったから大人しく座っている。

 アル。兄ちゃん、挫けそうだよ・・・

 フランシスがパーシヴァルの弟自慢から解放されたのは、一時間後のことであったという。