Title:自宅で青嵐

 例の2人がうちに遊びに来た。
 滞在中は当たり前のように毎日雨で――この辺の事情が分からない奴は俺の居住国の気候を調べてみてくれ。すぐに分かる――、観光に行くようなところは行き尽くしていた事もあって、無理に出かけるよりは家でのんびりしていようという事でKの持って来たゲームをしていた。

 あらかじめずっと家にカンヅメになることを予想していたとはいえ、ゲーム機を大量に持って飛行機に乗って来るとは予想外だったな。「先に郵送しとけばよかったんじゃないのか?」と言ったら、「送ってから私がそちらに行くまでの間、私はどうやってゲームをすればいいんですか!?」と言われた。ポータブルゲームでもしとけ。

 まあそれはともかく。俺もBもゲームが上手いわけでも好きなわけでもない。特に俺なんかはクロスワードやナンクロとかいったアナログな遊びのほうが好みだ。

 このときやっていたのはレーシングゲームだった。
 世界で最も知られている某配管工たちが出ているゲームで、レースのコースも砂漠だったり宇宙だったりと一筋縄でいかないものばかりだ。

 このときは負けたら晩飯の買出しに行くという罰ゲームをつけてやっていた。
 まず一抜けしたのがK。持ち主なだけあってとことんやりこんでいるし、そうでなくてもKのゲームの腕はかなりのものだからな。
 だから俺とBの一騎打ちになった。

 さて、読者諸君にはここから想像力を働かせて欲しい。

 俺達3人は絨毯の上にラグマットを敷いて、その上に座り込んでいた。
 座る場所はテレビに向かって左から俺・K・Bだ。

 Kはコントローラーを膝の上に置いて俺とBの対戦を見ている。(隠しルートとショートカットで一周差勝利しやがったからな・・・)

 そんな中、ふと横を見ると胡坐をかいたBの膝にしな垂れかかる様な体勢でKが座って・・・いや、寝そべっていた。

 これはまあ、いい。
 仲のいい、気安い友人相手ならするような態度だろう。

 だがさらに、茶請けに出していたクッキーを食べさせてやったり、食べるついでに指を舐めたりするのは予想外だった。

 お前ら、羞恥心はどこに行った ∑( ̄ロ ̄|||)。
 それとも普段からしてんのか?そうなのか?

 疑問とかツッコミとかその他諸々が頭の中に浮かんだが、口には出さなかった。
 てか、出す前に衝撃のあまりボタン操作を思いっきり誤ってそれどころじゃなくなった。

 ・・そして当然の如く負けたのは俺だった。

 まあ、最初から負けるつもりだったけどな。
 負け惜しみじゃないんだからな!

 何せ、俺はまだこの2人に付き合っていることを知らされていない。
 いちゃつく友人バカップルの横で甘い空気にあてられるぐらいなら、「お邪魔虫は退散するから」とか言って逃げさせて欲しい。もちろん分厚いオブラートにくるんで言わせていただく。

 というわけで俺はとっとと買出しという名の逃走に向かった。

 この日記は買出し後の時間つぶしに携帯で打っている。
 2人きりで何をしているのかとか考えたくないが、変なタイミングで帰りたくないから頃合を見計らいつつ遅く帰るつもりだ。

 ・・・あいつら、とっととカミングアウトしてくれないだろうか。