「最近、ロシアが可愛いんだ・・・」
「・・・・・・・・・」

 浮かない顔をしたイギリスにバーに誘われ、いつものように愚痴を聞いてあわよくば同衾してしまおうと考えていたフランスは、言われた一言を認識するまで少々の時間を要した。

 ロシア。正式名称ロシア連邦。世界最大領土を持つ連邦国家。首都モスクワ。GDP世界第10位。年間通して寒冷な気候で、不凍港に憧れを持っていて、一面の向日葵畑が長年の夢だとか・・・・・・ああ、うん、それはどうでもいいんだ。
 確認すべきことは別にある。

「えーと、イギリス」
「なんだ?」
「ロシアってあのロシアだよな?同名の別人じゃなくて」
「あのロシアがどのロシアなのかは分からんが、背が高くてマフラーつけててコルコル言っては小さいビクプルしてる奴を失神させているロシアだ」
「・・・そうですよね」

 で、お前はそこまで言っときながら「可愛い」って言ったよね。

 心中でしたツッコミに気づいたのか、イギリスは気まずそうな表情でテーブルに突っ伏した。

「色々とおかしいとは思う。けど、なんか、こう・・・あーかわいいなーとふと思ってしまった自分に気づいた瞬間にありえないだろ俺!ってツッコめなかった自分に盛大にツッコんだ自分に逆にツッコミいれたい・・・」
「落ち着け。言ってることが分かりにくい」
「これぐらい分かれバカワイン」

 荒れた声にヤケになってるなーと思う。
 でもこれどうすりゃいいのさ。

 酔いつぶれさせてお持ち帰りしようかなと不穏なことを考え出したフランスの横でイギリスの独白は続く。

「そりゃ、俺はアメリカのことも可愛いとか本気でいえるぞ?自分大好きで周りの迷惑なんて省みずに突っ走っている傍若無人なところとか。行間読めなくて空気に文字が書いてあると思ってるような馬鹿さ加減とか。ホラー苦手なのにわざわざ怪談特集見たりホラー映画観たりするヒーローの方向性間違ってるところとか・・・」

 ・・・アメリカがあんななのは間違いなくこいつが甘やかしたせいだな。
 てかアメリカの奴これ聞いたら嫌がるだろうなぁ。

「涙目で震えてたり、極たまにだけど打ちひしがれてたり、正義感が変な方向に暴走してたりするのとか見ると頭撫でて甘やかしたくなるだろ」
「えーと、1つおかしなの紛れてた気がしたけど概ね同意・・・していいのか俺」
「知るか。でもそれって昔のあいつを知っているからそれの延長みたいな感じで――和めばいいんだか自己嫌悪すればいいんだかよく分からないんだが――まあそんなものだと認識してたんだが、ロシアにも似たように感じるって俺ってそういう趣味だったのか?」
「そういう趣味ってどういう・・・」
「えーと、図体でかくて中身子供な唯我独尊的独走型迷惑製造内心腹黒純粋凶悪大国?」
「・・・・・・だからなんでそこまで分かってて可愛いとかいえるんだお前は!?」
「だって本当に可愛いんだぞ。上目遣いとか潤んだ目とか頭撫でてやると喜ぶところとか!」
「なんか発言が親父くさいんですけどー!!?」






 オチなんてない!

 仏と英はセフレ。