殺して戮して破して壊して消して滅して・・・
立つよりも先に剣を握り、喋るよりも早く生命を屠った。 悪魔の所業? それはお前たちの見方だろう? だって俺は天使だもの。
俺の役目は世界のバランスを崩す存在を殺戮し破壊し消滅させること。 この役目に名をつけるならば『命に終焉を齎す死天使』となるのだと、あるとき出会った同胞が言った。 ある者は俺を死神と恐れ、ある者は俺を悪魔と蔑み、ある者は俺を救世主と崇めた。 折り重なる屍の上に立ち、倒れ付す亡骸を踏み歩き、怨嗟と畏怖に塗れて生きていた。
疑問なんて持たない。
悲哀?懺悔?憤怒?
戦うことは楽しい。 神様のお人形?
別にそれでも構わないさ。
「お前、俺と来い」 生まれたときから完結された天使の生に唐突に割り込んできた彼は、その傲慢さと強引さでもって俺の手を引いた。 「俺は神聖ローマ。二代目の魔王にして魔界を統治する者」
俺の膝までしかない幼い子供の容姿。しかしそのか弱い外見に反し、獰猛な獣のような目と周囲を平伏させんするかのような威圧感を纏う王者。 「死天使。神なぞ捨てて、俺のものになれ」
後から考えてみると不思議なことだが、そのときの俺は剣を鞘から抜き放つことすら考えつかなかった。
魔王、はじめてのおつかい。
どうして彼の言葉を聞き入れる気になったのかは今でも分からない。
運命?
そんなものにこの理由を名づけさせたくはねぇな。
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