「・・・兄上。何してんだ?」 この前もこんなやりとりしたなーと現実逃避気味に考えるプロイセンの視線の先では、透き通った青色の花弁を持った美しい花が如雨露へ向かって牙をむき出しに威嚇していた。
闇に覆われた薄暗い世界? 残念ながらどれもハズレだ。
そりゃ、花咲き乱れて木々踊るとまではいかないが、不毛の地ってほどじゃない。 ようは人が住む地域とそう変わらないのだ。
そもそもここは魔界と呼ばれてはいるが、遥か昔に大陸中に跋扈していた魔族たちが魔王ゲルマンによって支配下に置かれ、その集大成として建国された国なのだ。 人は必要以上に関わって騒動を起こさないように、この地を魔界と呼んで不可侵とした。
魔界を治める魔王が住む城は海に近いところに建てられている。 最近になって、その城の屋上に花壇が作られた。作ったのは城の主である神聖ローマだ。
そのときは作った理由を聞かなかった。 だけどこれは放っておくわけにはいくまいと、プロイセンは兄のために腹を括ることにした。
「急に花を育ててどうしたんだ?」
照れたように黙り込んだ神聖ローマの頬はほんのりと色づいている。それを指摘することなく気取られないよう視線を逸らしたプロイセンは、複雑な思い諸々を飲み込んでため息として吐き出した。
「贈り物に魔界植物はダメだと思うぜ・・・」 そうだろうとも。
魔族同士ならともかく、人に魔界植物などという危険生命体をプレゼントするのは嫌がらせに捉えられても仕方ないことだ。 容易に予想できた未来予想図に頭痛がしてくる。 センスは悪くないはずなのに、なんでこうも変なところがずれているのだろう。 「まあ、普通の花はこの気候じゃ育たないだろうけどよ。寒冷地でも育つ花っていったら、アイリスとかクレマチスとか」
神聖ローマが花壇を作り出したと聞いて、急遽購入した園芸の本から得た情報を引っ張り出しながら花の名前を並べる。
魔王、花を育てる
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