「今回の作品から新人が参加することになった」

 そう告げたフランシスが『学園ヘタリア』収録現場に連れてきたのは、以前起こった”フランシス三股騒動”の被害者の1人であるセーシェルだった。

「というわけで今日から撮影に参加するセーシェルだ」
「よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げたセーシェル。

 久しぶりー。こちらこそヨロシクー。などと声が返されるのに一つ一つ返事しながらも、セーシェルの意識はどうしても別のところに持っていかれてしまっていた。

 ここは学校の教室内の撮影セット。
 その中央に鎮座するのは――室内にも拘らずもうもうと煙を立てるバーベキューセット。

「・・・なんで焼肉してるんですか?」
「夏バテ対策です」

 噂以上に変な仕事場だ。
 セーシェルはタレの入った器を受け取りながら、このノリについていけるだろうかと早くも不安になっていた。