「イギリス!俺、ヒーローになってくるんだぞ!」
いつものように先触れもなく家にやってきたアメリカは、庭で妖精を相手に茶会をしていたイギリスの姿を見つけるなり声高らかに宣言した
「これを見てくれよ!」
特殊な紋様で縁取られた上質の羊皮紙に、赤のインクで掲げられた表題と白い文字で記された文章、最後に緑のスタンプで押された王印。皇室の、それも最高統治者である皇帝その人だけが使うことを許された手法で作られた通達書――通称・皇式通達書の内容は王命と同等の効力を持つ。
『勇者募集中。 ・・・例え、その内容がなんともアレだったとしてもだ。 いや、やっぱり王命だとしてもこれはどうなんだろう。
「・・・詐欺じゃないのか?」
ギルドは傭兵や冒険家に仕事を融通する、依頼者と受注者の仲立ちのための機関だ。 てか、この馬鹿は王の依頼だからとか内容がどうとかじゃなく、ヒーローという字に釣られたんだろう。
「というわけで、これから城に行くから弾が欲しいんだぞ。新作のも!」 それが本題か。
魔法が(優しい言い方をすれば)不得手なアメリカは自然と物理攻撃に特化するようになった。
妖精に家から持ってきてくれるように頼めば、弾を詰め込んだ箱を持ってきてくれる。
「なあ、アメリカ」 黒い。笑顔がすっごく黒い。 払わずに逃げるという手が浮かんだが、ヒーローはそんなことはしてはダメだという思いが彼を留めた。単純に怖かったんじゃないかという追求は聞かないんだぞ!
「気をつけて行って来いよ。あ、城下町でアイテム系の店を開いてる兄弟のカナダによろしくな」 薄くなった財布を持ってアメリカは旅立っていった。
まずは何より宝箱
ううう、酷いんだぞイギリス・・・。まずお金を稼がないといけないじゃないか。
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