謁見の間を出た3人はイタリアの案内で城の応接室の1つに移った。
ふかふかの高級そうなソファーに座ると、早速イタリアが話し始める。
「捜すのはね、オーストリアさんっていう人(?)だよ。玉座の横に立ってる紫の目の人(?)なんだけど、分かる?兄ちゃんの補佐官やってて、子供の頃の教育係でもあるんだー。怒るとすっごく怖くてね、悪いことしたら木に縛られたりしたなぁ・・・。あと、ピアノが上手でね、暇なときはずっと弾いてるんだよ」
「お前の兄の補佐官ということは、この国のナンバー2というじゃないか。この前のお前といい、なんでそんな人物が行方不明になってるんだ!」
「俺のことは忘れてよ〜。それに、兄ちゃんはああ言ったけど、実は行方不明じゃないんだ・・・」
深刻そうな顔で声を潜めたイタリアに、ドイツとアメリカは顔を見合わせる。
一体何があったというのか。
「2人だから言うけど、実はオーストリアさんは」
内緒話をするように前かがみで顔を寄せ合いながら、イタリアはゆっくりと告げた。
「迷子なんだ」
・・・・・・。
「本当に、どうなってるんだこの国は!!」
「ヴェー。俺に怒鳴らないでよぉ」
「あ、ああ、すまん」
「オーストリアさんね、すっごい方向音痴なんだー。城の中でも偶に迷うからいつもはハンガリーさんと一緒に居るんだけど、ハンガリーさんが用事でいなくて1人だったんだ。それでね、俺が見てるように言われたんだけど、ちょっと目を離したら『楽譜を買いに行ってきます』って書置き残して多分街に出て、帰ってこないんだー」
「・・・・・・」
「街の人はオーストリアさんが方向音痴なの知ってるから、1人なの見つけたら送ってきてくれるんだけど、それもないんだー。だからもしかしたら街の外に居るかもしれないってことで、アメリカを呼んだの」
「でも徒歩ならそんなに遠くまで行けないんじゃないかい?」
「うーん。普通はそうなんだけど、オーストリアさんだから・・・」
いなくなったのが今日だというのなら、いますぐ周囲の街に人をやれば見つかるのではないだろうかと思うのが普通だ。
しかし、イタリアの歯切れは悪い。
「昔ね。オーストリアさんがいなくなって、でも忙しくて探せなかったことがあってね。そのときは3日後に北のソビエト連峰で見つかったんだ」
「・・・・・・アドリアには大陸の端から端へ3日で行く方法でもあるのか?」
「ないはずなんだけどね・・・」
「そういえば、(?)って何なんだい?」
「あ、それ?オーストリアさんが人じゃないからだよ」
さらりと言われた事実に頭の許容量を超えたらしい逆境に弱いドイツがテーブルを叩いて立ち上がる。
「猫とか鳥とかいうオチじゃないだろうな!?」
「動物に補佐官は無理だと思うんだぞ」
「どっちも違うよー。普段は人の格好してるんだけど、実は竜なんだよ。ずっと昔から皇帝に仕えてるの。水の上歩けるし、空も飛べるんだ。だからどこまでも行っちゃうんだ・・・」
「「・・・・・・竜!?」」
ただいま迷い竜捜索中
「じゃあ、しゅっぱつー!」
「待て。お前は一応王族で、要人であって・・・」
「社会見学なのであります、隊長!」
「学生かお前は!」
「いいじゃないか。イタリアの回復術は頼もしいしさ!」
「俺がんばるよー!」
「お前たちの言い分は分かるが体力や装備の面を考慮して・・・聞けー!!」
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