大陸南部最大の国、ローマ帝国。英雄ローマの名を冠す肥沃で平和な帝国と謳われる帝都アドリアは、年中豊富な水に恵まれている水の都だ。
歪な円状の街は中心部に行くほどに水深が深くなり、中央に建つ城は橋や通路が繋がっておらず周囲の建物とは完全に独立している。
美しい景観の街、さらには雄大な国の象徴たるアドリア城はその期待に応えるかのように優美な装飾の成された荘厳なものである。 「あの公募で本当に来る奴がいるとはなぁ・・・」
朝から執務室に篭もりきりだったロマーノのところへ血相抱えた門番が駆け込んで来たのはほんの数十分前のことだ。
あの場に居た執務官たちの心情は間違いなく「マジか」で一致しただろう。
英雄が、というか腕の立つ人手が欲しかったのは本当だ。
さて、やって来るのはどんな奴なのだろう。 「まあ、どれでもいいか」 現在、城内はダンジョンモードに移行している。本来は外敵に侵入されたときに使うものだが、レベルを落とせば腕試しに使っても大丈夫だろうということになった。 応募者――もうここまで来たら挑戦者と言い換えるべきだろうか――が謁見の間に辿り着けたらひとまず合格。あとは直接話し合って決定を下せばいい。 「んじゃま、シェスタでもしてるか」 教育係が聞いたらぽこぽこ怒りそうな独白を残し、ロマーノは背もたれを倒した玉座に――なんで玉座にそんな機能がついているのかは気にしないでください――寝そべった。
1stダンジョンは城下町
「寝るより前に諜報部が集めてきた応募者のプロフィールをお読みなさい!」
|