「防具の素材集めに協力していただけたら、多少ですが値引きしますよ?」という日本の申し出にアメリカは即答で飛びついた。
 銃を使う彼は戦闘の度に消費される弾の補充をするために万年金欠であった。自分で製造できるようになれば解決される問題だが、残念ながら魔法の才能が0のアメリカには稼ぐよりも難しいことである。

「では、出かけましょうか」

 着物に背負子という東部古来の商人スタイルとなった日本の先導で、街に隣接する森へ向かった。

「この森は資源が豊富でして、だから中国さんはあの街に店を構えたんです」
「へー。そういえば、君は東の方の出身なのかい?」
「ええ。東部の、さらに海の向こうの島国の出身です。乗っていた船が難破して流れ着いたところを中国さんに拾っていただきました。そこで防具製作のノウハウを学び、一人立ちしてからは武者修行を兼ねて大陸全土の行脚をしております」
「ドイツみたいだな!」
「そうですね。私が初めてドイツさんにお会いしたのも行脚の途中でした。採集中にモンスターに襲われていた私をドイツさんが助けてくださったんです」
「あれは余計なお世話だったような気もするがな。お前は見た目に反してかなりの腕前なわけだし」
「そんなことはありませんよ。一人旅だったのに連れが出来て大変楽しかったですから。また機会があればパーティを組んでいただきたいものです」
「・・・残念ながら、しばらくは無理そうだな」
「でしょうね。あなた方の噂は私が居る街にまで届いてますから、よく分かります」
「ねえねえ、日本って強いのかい?」
「ごく平均的だと思いますよ。目立った戦歴もありませんし。せいぜい北部に生息する惑星大爆発から生まれたような怪物と戦って引き分けたことがあるぐらいです。師匠に叱られたのであんな無茶はもうしませんけど」
「か、怪物!?なんてクレイジーなんだ!」
「昔の話ですよ。ほら、若気の至りというやつです。それに今回は採集用の道具だけで武器は持ってきていませんから、戦闘能力は0ですね。期待してますよ、アメリカさん」
「ああ!ヒーローに任せてくれ!」

 お前それはこき使ってやるからなという意味なのだが分かっているのか?という言葉をドイツが飲み込んだかは定かではない。

 

「今回必要なのは水馬の皮とガルム石、ツタの葉、ツナギムシの粘液ですね」
「ムシの粘液!?気持ち悪いんだぞ!」
「一般的な素材ですよ。素材の結合に使うんです。ああ、それから中国さんに頼まれたムラサキウシの肉もついでにお願いします」
「大荷物だな」
「帰るごろには日が暮れてるでしょうね。お夕飯は中国さんがご馳走を作ると言っていたので期待して下さいね」
「ワンダフル!じゃあ、まず軽そうなツタの葉から・・・」

 意気揚々と足を踏み出したアメリカは、数歩も行かないうちに行く手をゴーレムに阻まれた。

 アメリカが腰の銃を抜き、後方を歩いていたドイツが前に出て構える。

「日本!君は下がって・・・って、遠っ!」

 アメリカが日本を振り返ると、彼は遥か後方にあった岩陰まで退避していた。「がんばってくださいねー」という声が風に乗って届く。

「一瞬にしてこの距離を移動するとは・・・」

 以前よりも上がっている機動力にドイツが感嘆の声を上げた。もっと他に言うことがあるだろうという指摘はない。
 外野から「日本さん、潔すぎ!」とか「こき使うと決めたら遠慮しないアルな」とか「すばやさの起源は俺なんだぜ!」とか聞こえる気がしたが気のせいだろう。

 

                                                  すばやさアップは基本です

 

「いやぁ、大変楽ゲフン順調に素材を集めることが出来ました。ありがとうございます」
「疲れたんだぞ・・・」
「採掘など久々にやったな。ついでにいい砥石を手に入れることが出来たのはありがたいが・・・」
「ふふふふっ。帰る前に温泉で汗を流しましょうか。ここの水脈はいいお湯が出るんですよ」