「極秘任務だぞ、コノヤロー」
すっかり顔パスになってしまった城の、悲しいことに道順を覚えてしまった先にある謁見の間にて、不本意にもすっかり見慣れてしまった尊大な態度の皇帝を見上げながらドイツはため息と共に片手を上げた。
「ちょっといいか?」
「なんだ?」
「アメリカがいないんだが」
話を聞くべきはあいつだろうに、皇帝は不在理由を問うこともせず話を始めようとしている。それでいいのか。
「あいつに言うよりお前に言うほうが確実だろうが。事態は一刻を争うんだよ」
「・・・何があった?」
「誘拐された」
「誘拐!?誰がだ?」
「ローマ帝国王位第一継承権を持つ第一皇女イタリアだ。俺の兄弟だな」
「それは・・・かなりの要人じゃないのか?」
「誘拐した側は気付いてないみたいだけどな。その辺の庶民の子供だと思ってる」
「・・・は?」
「城抜け出して、街のガキ共と遊んでるうちに人身売買をやってる連中にとっ捕まったらしい」
「それは・・・なんというか・・・」
「正体がばれた方が面倒だ。身代金の要求とかしてくるんならともかく、どこぞの好事家に売られでもしたら何されるかわかんねぇし。くれぐれも気付かれないように連れ戻して来い。人身売買組織そのものや他に連れて行かれた奴についてはこっちで始末をつける。いいか、気付かれないようにだぞ。特にうちの連中に皇帝の弟が捕まってたなんて醜聞がばれないように!」
「・・・・・・弟?」
「そうだ。世間様には妹ということになってるが、本当は弟なんだ。まあ、ここは王家の汚い事情が絡んでるんで関わるな。お前もアメリカも外でこの事実をバラしやがったら存在そのものを抹消してやる」
「Ja・・・。ところで、その姫・・・あー、弟君の顔を知らないのだが」
「あぁん?んなもん見たら分かる。俺と双子だからな」
「・・・・・・・・・子供じゃないのか」
「中身はガキとそう変わらないな。おら、とっとと行って来い!あいつ泣き出すと鬱陶しいんだよ。ぜってぇ今もびぃびぃ泣いて殴られそうになって謝って騒ぎ立ててるに決まってんだ」
「・・・心配なのか」
「いいからとっとと行けー!!」
囚われの姫を救出し
「うわあああああん!兄ちゃん兄ちゃん。なんか誘拐犯より怖い顔した奴がいるよー!」
「えぇい。泣くのをやめんか!」
「HAHAHA。これくらいで怯えるなんて軟弱なんだぞ☆本気で怒ったドイツはもっと怖いんだからな!」
「ヴェエエエエエエエエ!!」
「アメリカー!余計なことを言うなー!!」
|