久しぶりにやって来たイギリスは一人ではなく、生後間もない赤ん坊と一緒だった。 「・・・誘拐?」 「ちげぇよ。国だよ、く・に!」 スカイブルーのショールに巻かれた赤ん坊はイギリスの腕の中ですやすやと寝ている。 ふくふくとした頬は柔らかそうで、薄っすら赤く色づいた肌はかわいらしい。 そっと指でつつくと思ったよりはがさがさした感触がして、でも子供体温らしく温かかった。あとふにふにしていて気持ちいい。 あー・・・でも僕はイギリスがいいなぁ・・・ 赤ん坊の頬をつついていた指を離し、イギリスに触れようと腕を伸ばす。が、その前に倒れてきた体を受け止めることになった。 「イ、イギリス!?」 「うるせぇ・・・夜泣きが酷くて寝てないんだよ・・・」 まじ眠い。てか寝かせろ。 ぶつぶつ不明瞭なことを呟きながら体をおこして、手に持っていたものをロシアに預けるとそのまま横を通って奥に入っていって行こうとする。 って、ちょっと待ってよ。 「寝るために来たの?」 「・・・そいつ頼むな。名前はアメリカだ」 微妙に返事になっていない。 そいつと言いながら指差されたのは、今はロシアの腕に抱かれている赤ん坊。 「ちなみに俺を途中で起こしたらモスクワを」 そこまで言ってイギリスが視界から消えてどたんという音がした。 視線を下げれば廊下の絨毯に倒れ伏している痩躯。 「・・・・・・・・・」 そーっと屈み込んで口元に手を当てると規則正しい寝息があたる。余程眠かったのか。 なんでイギリスは頼みごとが脅迫になるのかなぁ・・・ 頼られたらしいことは嬉しいんだけどねと独り言を言って、腕の中の赤ん坊と床の上のイギリスを見た。 自慢じゃないが赤ん坊の面倒なんてみれない。 とりあえず、リトアニアを呼ぼうかな。 +++++++ 育児ノイローゼ気味なイギリス。普通は寒冷地に赤ん坊を連れて行ったりはしない、はず。 ちなみにロシアがイギリスを呼び捨てなのは昔の名残という自分設定あり。公の場では君付けにするつもりです。 |