$あらすじ$
 ローマにやってきたSHKの3人。
 映画のような観光をしてのどかなひと時をすごしていたが、急な襲撃に遭いはぐれてしまう。
 いつもとは違う執拗で物騒な追っ手に戸惑うスイスと日本。
 荷物とともに移動していたイギリスのもとへ現れた謎の少年。
 果たしてなにが起こっているのか・・・!?彼らの明日はいかに!
 

 $$$



 油断していたとはいえ、イギリスに気配を感じさせることなく車中に入り込んでいた少年は沢田綱吉と名乗った。
 日本からイタリアに移住してきたしがないサラリーマンだという彼は、見た目に反して20半ばなのだという。
 ・・・童顔はお互い様だし、連れからして年齢不詳な外見をしているからそれについてのコメントは控えることにして、とりあえず車を停めて助手席に座らせる。

「で?そのしがないサラリーマンが何してるんだ?」
「えぇっと・・・待ち合わせしてたんですが、あまりに眠くて気づいたらこの車の中で熟睡・・・すいませんすいません冗談ですごめんなさい!」

 そんなにきつく睨み付けたつもりはないのだが、自覚している以上に切羽詰っているのだろうか。

 ・・・・・・どうして?

 目を閉じて背もたれに体を預ける。

 不安ではない。それとは違う嫌な予感がする。いや・・・これは違和感だ。

「あの・・・」

 とりあえずこいつを警察署に放り込んで・・・と考えていると控えめな声がかけられた。横目で睨む様に見ると一瞬怯んで身を竦ませたが、それでも言葉を続けてくる。

「逃げたほうが・・・」
「は?」

 何を言っているんだと拍子抜けした声を出したとほぼ同時に、車を強い振動が襲った。
 驚いて外を見ればすぐ隣の地面が陥没している。先ほどスペイン階段に打ち込まれた砲丸と同じもののように見えるのは気のせいではないだろう。
 体を起こして車を発進させてすぐ、車のあったところに砲弾が突き刺さった。

「Damn it!(畜生!)」

 車を走らせながら砲丸の飛んでくる方を睨み付けた。

「・・・戦車、ですね」
「戦車だな」

 正しくは砲台を積んだ4WDだが、ぶっちゃけ戦車とそう変わらない。違いを挙げるとすれば、装甲のせいで速度の遅い戦車より速いことだろうか。

「Wacks・・・(いかれてやがる)」

 狙いを定められないように蛇行しながら走る。ふと気になって隣を見れば、綱吉が懐からマグナムを取り出して構えるところだった。

「おい!?」

 銃声が響くが、当然のように効く気配はない。
 窓から出していた顔を引っ込めた綱吉は、銃を仕舞いながらイギリスを振り返った。

「適当なところで下ろしてください。・・・あいつらが狙ってるのは、俺です」


+++


 携帯がないことに気づいたスイスと日本はしばらく困惑していたが、イギリスの携帯に電話すればいいという結論に至った。

「おかしいですね・・・繋がりません」
「あちらも取り込み中ということか。さて、どうしたものか」

 あまりのんびりしているとイタリアとロマーノにばれる可能性がある。あの双子のことだから、気づけばドイツとスペインを呼んでそれがフランスを呼び、さらにはアメリカと中国がやって来るという事態になりかねない。

「面倒ですね」
「面倒であるな」

 うんうんと肯きあったスイスと日本は、互いの獲物に同時に手を伸ばすとそれを一点に向けた。

「何者だ」
「あー・・・怪しい者じゃないです」

 銃口と剣先を向けられて両手を挙げて見せたのは黒髪の東洋系の青年。その腰に差している日本刀が怪しいことこの上ない。

「俺、山本っていいます。そっち、日本の人、だよな?」
「そうですけど、何か?」
「・・・この騒ぎ、俺のせいらしいんで謝っとかないとなーと」
「何かご存知なんですね?」
「ああそれについても話す。だからとりあえずその物騒なものは仕舞ってくれない?」
 
 
+++


「・・・下ろしても狙われ続けそうな気がするのは気のせいか?」
「・・・それはそうなんですけど・・・って、いやちょっと睨まないで下さい!トラウマが掘り起こされるんで!本当に!マジで!」
「連れが襲われたのもてめぇのせいか?」
「あ、はい。えっと・・・俺訳あって人に言えない職業してるんですけど、それの仲間と待ち合わせしてて、その相手というのが黒目黒髪で長細い包み持ってる男性でして・・・」
「・・・間違われたと?」
「おそらく・・・」

 言葉だけ聞けばそのまま日本に当てはまる。全く持って迷惑なことだ。

「そうか、よーく分かった」
「はい、ですから」
「お前、後ろの荷物取れ。そこの青い鞄だ」
「はい?」

 下ろせという綱吉の声を遮って指示すれば、疑問符を浮かべながらも言われたとおりに後部座席のスポーツバックを手に取った。

「お、重っ・・・なんですか、これ」
「対戦車用サブマシンガン」
「・・・え゛」
「貸すから撃て。んでそれから出て行け」

 スイス愛用の対ヘリ用に改造されたものだが、本来の目的どおり車相手でも問題ないだろう。

「・・・あなた、何者ですか?」
「・・・しがない観光客だ。ああ、アーサーと呼んでくれ」

 不審さを露わにした表情を浮かべている綱吉の視線はないことにする。
 身分を隠しているのはお互い様だ。


+++


 ローマの街を2台のバイクが走っている。
 乗っているのは金髪に翠の目の青年と黒目黒髪の青年。2人ともヘルメットは被っていない。その前をヘルメットを被った青年が誘導するように走っていた。

 辿り着いたのは大通りの一角。
 地面は陥没し、周辺の建物にもひびが入って崩れている。
 その中で唯一無事な車の横に2人の青年が立っていた。茶髪の青年は地面にへたりこむように座っていて、その隣で金髪の青年が何かを話していた。

「ツナ!」
「山本ぉ・・・」

 ヘルメットを被った青年がバイクを捨てるように降りて茶髪の青年に走りよった。
 少し遅れて後ろの2人が追いつく。

「に・・・菊。バッシュ」
「アーサーさん。ご無事で」
「・・・・・・・」

 国名を言いかけて慌てて言い直したイギリスにならい、日本も人名で呼ぶ。スイスは再会を喜ぶよりも前に、外に出されている愛用の銃器に眉をひそめた。

「あー・・・借りた」

 スイスの視線を受けて気まずそうに顔を向けた先では、見事に蜂の巣になった車が横転している。
 これをやった本人は、マシンガンの反動でドアミラーに後頭部をぶつけて悶絶することになった。
 説明せずとも状況を把握したスイスはマシンガンの具合を確かめてからそれを鞄に戻した。

「お宅ら武器商人か何かか?」
「ただの観光客です」

 この状況で生きている辺りからしてすでに常人離れしているのだが、間髪入れない返答と無言の重圧に押されて山本は口をつぐんだ。
 こちらとしても巻き込んでしまった負い目がある。それに仕事仲間を匿って貰った手前、強くは出れない。
 頭を押さえていた綱吉を見下ろせば、痛みから回復したらしく立ち上がるところだった。

「えーと、今回のことは本当にごめんなさい。残りの処理はこちらで引き受けます」

 ぺこりと頭を下げた綱吉にならって山本も礼をする。
 それに日本がお構いなくと返した。
 
「警察のほうにも手を回しておきますから、このまま観光を・・・」
「それは無理そうである」

 遠くを見てスイスが呟く。イギリスが車から双眼鏡を取り出して見れば、遠くの空に見慣れたヘリ。
 戸惑う綱吉に日本があいまいな笑みを向けた。

「あれだけ大騒ぎすればバレますよねぇ・・・」
「マシンガン、片付けないほうがよかったんじゃないか?」
「向こうからこちらが見えるところで撃ったりするものではないのである」

 よし、逃げよう。3人の意見は話し合うでもなく一致した。

「あ、あの!」

 運転席にスイス、助手席に日本が入るのを見て、後部座席に入ろうとしたイギリスの手を綱吉が掴んだ。

「このままにしておくと先生に怒られるんで、えっと、これをどうぞ」

 渡されたのは筆文字の漢字で名前と連絡先が書かれている普通の名刺。

「何かあれば手助けしますから」
「・・・まあ、もらっておこう」

 名刺を渡すのは日本人の文化だと認識しているイギリスは特に何も考えずにそれを受け取った。
 そして急かす日本に促されるままに座席に滑り込む。ドアが閉まる前に動き出した車を見送って綱吉は呟いた。

「よい旅を」

 これが後にとんでもないことを引き起こすとは、誰も気づいていなかった・・・。





 ・・・何が書きたかったんだか、結局よく分からない代物になってしまった。ノリでやってるせいですね、はい。
 続きそうな雰囲気でてますが、後日談があるだけです。

 綱吉と山本は家/庭/教/師/ヒッ/ト/マ/ンからの拝借です。とはいっても原型ほとんどないです。あはは・・・
 イギリスが発してる英単語はスラング。たぶんあってるはず。
 あと見慣れたヘリというのは、国連マークがついてるのではなくてデイズニーキャラの絵が書いてあるものです。持ち主は言わずもなが。

 こんなのでいいのかなぁ・・・