「寒っ・・・」

 屋内から一歩出ればすぐに吹き付けてくる寒風に悲鳴をあげて身を縮こませた。
 昼はまだ日が出ていて温かかったのに、少し暗くなるとこれだ。

「お前、手袋は?」
「えーと・・・ない」

 両手をすり合わせているイギリスに気づいたプロイセンが振り返る。
 普段は黒の皮手袋をしているイギリスだが、先日の国際会議での騒動(例によってフランスとの喧嘩)の際に破損してしまって今はない。

 少し冷えるけどまあ耐えられないことはないからいいやと思っていると、並んで歩いていたプロイセンが立ちどまったからイギリスも歩み止めることになった。

「ん」

 差し出された手を前にして困惑した表情を浮かべるイギリス。
 無言でプロイセンの顔を見れば、ぶっきらぼうに「手」と付け加えられた。

 手を出せと言うことなのだろうと解釈して、とりあえず両手を出してみる。

 その行動にプロイセンは深々とため息をついた。

「なんだよ」
「いや、イギリスらしいところだよな」
「は?」

 しみじみと言ったプロイセンはイギリスから問うような視線を向けられてもそれ以上のことは言わず、出された両手を取って引き寄せる。
 冷えて白くなってしまっている手に顔をしかめると、自分の手袋を片方だけ外した。

「おい?」
「じっとしてろ」

 外した手袋をイギリスにつけさせて、もう片方の手を露わになった自分の手で覆う。

「うわ、すっげぇ冷たい」
「・・・じゃあ放せよ」

 自分から触っておいてどういう言い草だと怒鳴りつけようとしたところで、プロイセンはさっさと前を向いて歩き出した。
 手はイギリスの手を握ったままでさらにはしっかりと指が絡められており、放すことができないまま引っ張られる。

「ちょっ・・・プロイセン!?」
「さっさと帰るぞ。寒い」
「え、あ、ああ」

 数歩先を歩くプロイセンの背中を見ながら、空いている手の手袋を見て、繋がれた手を見る。

「・・・・・・・・・」

 しばらくは手袋を買わなくてもいいかとこっそり思った。








 イチャついてますかね・・・?
 いや、これが本当に精一杯です。何度悶絶したことか。
 手袋分け合ってもう片方の手は繋ぐというベタ展開・・・っ。

 イギリスは手をつなぐ意味とか分かってません。ただ温かいなーってだけ。
 プロイセンはそんなイギリスを分かってて恋人つなぎしてます。内心赤面。


笙子さんへ
 『普女英でイチャついてる話』ということでしたが、これでよろしいでしょうか・・・?!
 とりあえず恋人たちの定番をさせてみました。