撮影用の小道具として買い揃えられている英国産の紅茶缶――そのほとんどは室内セットの棚の中に並べられているだけなのだが中にはちゃんと銘柄どおりの茶葉が入っており、それはスタジオに置かれているコーヒーやお茶と同等の扱いを受けている――で淹れたジンジャーティーを飲みながら、今年ももう少しで終わりだと誰ともなく言い出した。

「そういえば、フェリクスさんとトーリスさんってカウントダウンコンサートをするんですよね」

 撮影に使ったクリスマスプディングを食べながら、アーサーが思い出したように言った。

 当の2人がコンサートのリハーサルがあるとかで先に登場シーンを取り終えていてここにはいないからだろう。
 その言葉に応じたのはジンジャーの独特の風味をキャラメルで消そうとしているフランシスだった。

「ああ、毎年恒例のソゥラ事務所主催コンサートな。31日から1日にかけて一晩歌い続けるとかまさにプロ根性・・・・・・監督、その不穏な笑みはなんだ」
「ウチもしたいなー」
「監督。俺ら役者」

 新年・クリスマス特番撮影中の休憩時間での会話であった。




「あの時、もっと強く釘刺しておけばよかったんだよなー・・・・・・」

 視線の先にはホワイトボード。
 貼り付けられた企画書には『ソゥラのニューイヤーコンサートに乱入しちゃおう計画その14』と書かれている。それまでの13個の計画はボツになったようだ。



落ちきらなかった煩悩に
「なあ、俺らがやってるのってドラマだよな?」
「・・・・・・・・・」
「そのうちバラエティー番組になったりしてな」
「・・・・・・笑えねー」