どこかの寺で除夜の鐘をつく音が聞こえ始める大晦日の夜。

「今年も後僅かですね・・・」
「うむ」

 剥いた蜜柑の筋を執念深く除去していた日本の声に、スイスはテレビに向けていた視線を壁の時計に向けた。時計の短針は頂点を指す寸前まで進んでいる。

「もうそんな時間か?・・・・・・お前は?ああ、そうか。お休み」

 酔い覚ましに縁側に出ていたイギリスが襖を開けた。後ろを振り返りながら独り言のように誰かに話しかけている姿はすっかり見慣れたものだ。

『さあ、今年もあとわずかです!』

 点けっぱなしのテレビの中で、番組のキャスターがマイクを片手に告げた。

 10、9、8・・・

「今年も色々ありましたねぇ・・・」

 7、6、5・・・

「なんだかんだいって、今年も無事にこの付き合いが続いたな」

 4、3、2・・・

「来年はどうなるか分かったものではないが・・・」

 ・・・1

『テレビの前の皆さん、あけましておめでとうございます!』

「「「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」」」

 いつもより馬鹿丁寧に頭を下げて、顔を見合わせて笑いあった。




富士より鷹より茄子より
「ところで日本。例のブツは?」
「しっかりと輸送済みです」
「貴様ら・・・年明けからそれか」