押し問答を続けて1年未満。一応恋人と言う関係になってはみたものの、当の恋人の態度はつれないを通り越して冷たい。
 おかげで極近しい友人たちにすら未だに想いが通じていないと思われているようだ。

 最近、餌付けしだしたって言われてるみたいだしなー

 隣を見れば無心にフランシスの作った弁当を食べているアーサーがいる。
 色々と嫌われていた自覚のある出会い当初からでも、フランシスの料理の腕だけは素直に賞賛していたアーサーだ。食べ物目当てに付き合ってないか?とか聞いてはいけない。頷かれる可能性のあるうちは。
 食べ終わった後に次のおかずの注文をつけられて、明日も一緒に食べれるのかと幸せを感じる自分は相当まいってると思う。これまでの恋人たちが見たら卒倒するんじゃないだろうか。

 ギルベルトもアントーニョもそれぞれの恋人のところに行っていて、屋上には2人しかいない。
 言うなら今かと自分の弁当箱を片付けてアーサーの方を向いた。

「なあ、アーサー」
「ん?」
「デートしない?」
「却下」

 返答までの所要時間0.3秒。おお新記録とか思える分、余裕出来てきたんじゃないか?俺。

 フランシスが恨みがましい目を向けるのと、食べ終わったアーサーが明日は鮭のムニエルがいいと言ったのはほぼ同時。
 さっさと教室(あるいは生徒会室)に行こうと立ち上がりかけたアーサーの肩に手をまわして抱きつく。肘が飛んでこないように腕を固定するのはもはや習性だ。

「鬱陶しい。放せ」
「そう言わずにさー。どっか出かけない?」

 週末の天気は晴れ。これから生徒会の仕事とかで忙しくなるのだろうから遊ぶなら今しかない。

「全部おごるからさ」
「断る。外出るの面倒だし人ごみ苦手だし。というかデートという響きからして嫌だ」
「・・・今度、アップルパイ作ってくるから」
「・・・・・」

 何でデートするのに交換条件がいるんだとか思ってはいけない。
 アップルパイの言葉に反応したアーサーに好機とばかりに言い募る。

「バニラアイスもつけるぞ?」

 わずかにだが縦に頷いたアーサーに、これじゃあ餌付けしてると言われても仕方ないかもしれないと少し挫けそうになった。