急激な成長で得た女らしいスタイルと引き換えに筋力の大半と少しの視力を損なったイギリスは、「栄養と休息をとれ」という診断を下したドイツの言葉をイギリス本人以上に真剣に受け止めたフランスとイギリスの上司が、見張っておかないと休息も栄養もまともにとらないという結論に至ったことによって、長期休養という名目でフランス宅に世話になることになった。 最初は今更男装をといて、さらにはフランスの世話になるくらいなら失踪してやると息巻いていたイギリスだったが、彼女が何よりもの優先的存在として位置づける女王陛下に「似合うと思って買ってあったの」と服や装飾品や下着すらまでもを贈られて、フランスに滞在することを渋々了承した。 「・・・でもさぁ、これってイギリスだけじゃなくその上司にまで男として見られてないってことじゃね?」 キッチンからダイニングへ料理ののった皿を持ってきたフランスがぼやく。 「信頼されてるんだろう」 自分の家に来るよう必死で説得していた奴の科白ではなかろうと、本を視線を固定したままのドイツは素っ気無く返答した。 「ついでだから晩飯食べていけよ」(副音声:心の準備が出来るまで二人きりにしないでくれ)と誘われ、イタリアがそれにのったため、自動的にフランス宅に訪問することになったのだが、別になんの問題もないように思える。 フランスは自分の好みなら性別年齢問わずに時には変態的にアプローチをかける好色ではあるが、本気で嫌がる相手への無理強いはしない。ましてや相手はイギリスだ。フランスのあしらい方など心得ているだろう。 ちなみにイタリアとイギリスは、イギリスが使う客室で荷物の整理をしている。 「・・・・・・なんか違う気がするんだよねぇ」 *** 「フランス、風呂あいたぞ」 泊まっていく案は却下されて、イギリスと二人で残されたフランスは自分の心配が早くも形になったことをつきつけられた。 「・・・イギリス」 「ん?」 何だと言いたげに首を傾げたイギリスに、フランスはどこからツッコもうかと悩んだ。 えーと、まず、髪が長くなったんだからちゃんと乾かさないと服が濡れるぞ。それからどうして大きめのシャツ一枚なんだ、せめて短パンでいいから下を穿け。下着が見えそうで見えないなんてチラリズム演出ですか?濡れてるせいで胸も見えそうだぞ。一人のときはいいとして、今は俺がいるんだからそんな無防備な格好をしてたら襲われるだろうが。むしろ襲っていいとかいう意思表示ですか?据え膳ですか? あれこれ言いたいことが一気にでてきて、結局一言になった。 「髪、乾かさないと風邪ひくぞ」 「分かってるよ」 今更、女の裸で取り乱すなよ、俺。 *** そして、その翌日。 二人分の朝食を用意していたフランスのところへ足音が近づいてくる。 起こしに行く手間が省けたなーと思いながら振り返り・・・そのまま固まった。 「フランス・・・これのつけ方がわからないんだが」 昨夜着ていたシャツの前を全開にした状態のまま、片手にはブラを持ったままやってきたイギリスは平然とフランスにブラをみせた。 ショーツとセットになっているそれは、細やかな模様のある上品なもので、イギリスの魅力を十分に引き立てるだろう。・・・こんな状況でなければ。 「・・・・・・・・・」 女性に恥を掻かせない精神だけでブラをつけてやると「Thanks!」と礼を言って部屋に戻っていった。 この後、ドイツはフランスからの「あいつ、俺を男として見てないんじゃなくて、自分を女と思ってないんだがどうしよう!?俺、育て方間違えた!??」という電話に悩まされることとなる。 女体イギリス話が別名・フランス苦労話になってきた。 本当はもっとちゃんとしたレディですよ。ただ疲れていて、周囲に気配りする気力がないだけです。ましてやフランスにいまさら何を取り繕わないといけないんだとまで思ってます。 もう少しすればそれなりにガードが堅い淑女になって・・・いくのかなぁ? |