「シンガポール!お前やたらとヨーロッパに肩入れすんな!ASEANの連中に文句言われるの俺なんだぞ!?」
「マレーシア、うるさい。近づかないで、変態」
「お前みたいなチビに興味ねーよ!」
「女だからいい。あなたのほうがチビ」
「これからでかくなるんだよ!目標はカナダ!」
「・・・百年河清。絶対に無理」
「なんだとー!?」

「こら!マレーシアもシンガポールも喧嘩しない!」
「「・・・・・・」」

 オーストラリアの声につかみ合いの喧嘩を始めそうだったマレーシアとシンガポールの動きが止まる。

「返事は?!」
「「はーい・・・」」

 渋々という雰囲気を漂わせ、互いを睨み付け合いながらも2人は大人しく返事をした。
 不貞腐れた表情のマレーシアの頭をオーストラリアが撫でて、それからシンガポールに何か言っている。

「オーストラリアの奴もしっかりしてきたなぁ・・・」
「ええ、本当に」

 紅茶を運んできたイギリスとその後ろから茶菓子を持ってきたカナダが庭を覗いて笑いあう。
 そのまま庭に出てきたのに気づいたシンガポールが駆け足で近寄ってきた。

「イギリスサマ。マレーシアがいじめる」
「お前が悪いんだろうが!」

 カップをテーブルに置くのを待ってシンガポールがイギリスの服を掴んで訴えるが、それにイギリスが返事をするよりも早くマレーシアが近づいてきてイギリスからシンガポールを引き剥がした。

「何かあるごとにイギリスさんに泣きつきやがって!」
「マレーシアもお化けが怖くてイギリスサマのベットに入ってた」
「何十年前の話だよ!?」
「日常坐臥」
「は?」
「今でもしてる」
「してねー!!!」

 ぎゃいぎゃい言い合いながらも座るのは隣。歳も国の場所も近いからと一纏めで育てられた習慣のせいだと2人は言い張るが、端から見ると仲がいいとしか見えないだろう。

「今日はメープルクッキーとバナナのタルトです。・・・ちゃんと同じ大きさに切り分けますから取り合うんじゃないですよ」

 いつぞやの惨劇を思い出したらしいカナダの視線に、その原因たちは必死で首を縦にふった。

「・・・カナダもすっかり母親だな」
「ですね」
「イギリス、どうぞ。オーストラリア、変なこと言ってるとあげませんよ」
「何で俺だけ!?」

 こっちのやりとりも慣れたものだなと思いながらイギリスはカップを傾ける。

 視界の端ではクッキーの最後の一個争奪戦が始まろうとしていた。






 英連邦でお茶会。母・カナダ。父・オーストラリア。子供・マレーシア、シンガポール。祖父・イギリス。(笑)

 マレーシアとオーストラリアの口調がそんなに違わないのが難点。一応マレーシアのほうが乱暴な言い方をしているんですが・・・。
 シンガポールの口調は舌足らずな感じで。やたらと四字熟語を多用しているのは日本に教えてもらってるから。

 喧嘩の規模は極めて低レベル。子供の喧嘩。遠慮がなさすぎて放っておくと周りが大変なことになる。
 一纏めにされてたせいでたまに同じ思考回路になったり似た様な仕草をしたりして自己嫌悪。




百年河清
 いくら待っても望みがかなわないこと。
日常坐臥
 毎日のように行う行為。