足元に広がる赤い紅いアカイ水溜り。

 見下ろした革靴は汚れてしまってもう使えない。

 少し考えるようなそぶりを見せたあと一歩を踏み出した。ぱしゃりと音を立てて水溜りが跳ねる。

 ぽたっと音がして音源に目を向けると自分の手に持っているものからだった。
 手に持つものは先ほど胴体と切り離してしまったから血が止まることなく流れ続ける。それはぽたりぽたりと血を落として水溜りを広げていく。

「・・・・・・」

 手に持っていることも忘れていたそれを視線の高さまで持ち上げて、少し考えてから背後に捨てる。
 どちゃりと鈍い湿った音がした。潰れてしまっただろうか。まあ誰も文句は言うまい。
 足元が汚れるのも構わず進む。こつりと何かが足先に当たった。
 自分を見上げる濁った眼球。
 小さくてどうでもいいものだったけどなんとなく気に食わなくて踏み潰した。
 ぶちゅりと音を立てて水晶体を撒き散らせながら潰れて広がる。すぐに赤色と同化してもう跡形もない。

 自分が広げた目障りな物体。
 己と相手の力の差に気づけなかった愚か者。虚栄と腐敗にまみれた塵芥。
 でもこうする前のほうが邪魔だったからまあいい。
 曲がった四肢も撒き散らされた内臓も大変満足だ。

「これぞ本当のシュチニクリンってね・・・」

 鼻につく鉄さびのような臭いは咲き誇る花の香りには及ばないが悪くはない。
 酔ったように目を細め、唇をつりあげる。大層凶悪な顔をしているのだろうが見ている人などいないのだからやめたりしなかった。


 この愚かなる世界に一抹の祝宴を!






なんかあったあとのようです。