これまでの流れ
 
 フランクの身柄はイギリスが預かることとなり、知っている人が一緒に居たほうがいいからとスペインがロマーノを伴ってついていき、衣装兼食事係となった日本とハンガリーにアメリカとオーストリアが付属して、楽しそうだとイタリアが追いかけたせいでドイツも巻き込まれた。以上


 フランスの飲んだ薬の成分が分かるまで3日。
 その解毒剤の作り方を見つけ出したのは、それから4日経ってからだった。

 そしてその翌日。

「お前ら裏庭から材料を捕獲して来い」

 朝食後にイギリスに指名を受けたドイツ・日本・スペイン・アメリカは、道具の入った鞄とともに外に引っ張り出された。

「なんで俺たちなんだ?」

 捕獲リストと題された紙を受け取りながらドイツが尋ねる。
 真面目で貴重面な日本はまだ分かるとして、慢性的に寝不足なスペインや無鉄砲なアメリカは邪魔な気がする。というかなんで採集じゃなくて捕獲なんだ。

「イタリアやロマーノじゃ頼りないし、オーストリアは論外だし、ハンガリーは女性だぞ?うっかり襲われたり食われたりしたらどうするんだ」
「・・・・・・庭、なんだよな?」

 ドイツの素朴な疑問は裏庭を見るなり自動的に黙殺された。

 広い。というか深い。自国のシュヴァルツヴァルトを思い出す。
 森と呼んでも過言じゃない規模の木の群生を庭と呼んでいいのだろうかと本気で考察しそうになった。
 
 しかも渡された道具からしておかしい。スコップやナイフはまだ分かる。ロープもまあ許容範囲だ。しかし、この塩とか異臭を放つ液体とか投網とかはなんなんだ。挙句の果てに「この庭にいるのは殺傷能力は低いけど用心しろ」という一言までもらった。本当に何を栽培してるんだ。ドイツの疑問は深まるばかりだ。

 森を前にして、迷ったらどうしようかというスペインの問いには、日本とアメリカが居る限りは迎えに来てくれるだろうという慰めをかける。
 ・・・木と同じ大きさの食虫植物や巨大な蝶や聞こえてくる奇怪な泣き声は聞かなかったことにしよう。

 いざ行かん。未知なる樹海へ。