サークルの先輩に誘われて参加することになったライブハウスのコンサート。
 開始まであと1時間だからとリハーサルスタジオで楽器の調律をしていたダルマシーの面々は、あることに気づいて皆が頭を抱えていた。

 ダルマシーのメインボーカルであるローデリヒ・エーデルシュタインが未だにやってこないのだ。 

「もう、あの子ったらどこ居るのかしら」
「ケータイは!?」
「電源が入ってないか、電池が切れてるかみたいで・・・・・・」

 マリアが溜め息をつき、ヴィリーが慌て、ファルコが疲れた顔で頭を抱える。
 これが先月にあった学祭のライブときもだったことは忌まわしい記憶である。

「全く・・・仕方ないわね」





『というわけなのよ』
「あー・・・マリア先輩?俺、来月にセンター試験を控えた受験生なんだが?」
『知ってるわよ』
「・・・・・・・・・・・・」
『ジュース奢るから』
「・・・恵来亭の肉まん」
『そこって30分は並ぶ人気の店じゃない』
「そうそうその店。一度食べてみたかったんだ。代金はローデリヒ持ちでいいから」
『・・・足元見てくれるわね』
「いや、充分等価だと思うぞ」

 12月某日。雪のちらつく寒い日のことであった。



おまけ