打ち付ける雨を合羽越しに感じながら溜め息をついた。
 無線越しに日本の気遣う声がして、なんでもないとだけ答える。


「カークランド卿。通信室より一報が」
「なんだ?」
「作戦Bが成功。次の段階に入ったそうです」
「・・・相手国の反応は?」
「交渉に応じる姿勢は見せています。畳み掛けることが出来れば最善なんですが・・・」
「ちょっと待て。・・・菊、そっちはどうだ?」
『Dプランに補正が入りましたが他は順調です』
「そうか・・・。じゃあそのまま進めてくれ。それとG2部隊をこっちによこしてほしい」
『はい』
「グランク大佐。F7部隊をS地点に向かわせろ。・・・その途中で負傷者をJJに送れ」
「イエッサー」
「菊。F7部隊がそっちに着いたらバッシュにH作戦の許可を伝えてくれ。おそらくこれ以降の通信は不可能になるだろうから3/7が失敗した場合は速やかに引け」
『分かりました。ご武運を』
「そっちもな。・・・なあ」
『はい?』


 「これが終わったらまた茶会を開こうか」
 そう言おうとしたイギリスはふとためらって、結局口をつぐんだ。


『アーサーさん?』
「いや・・・やめておこう。うっかり死亡フラグなんて立てるもんじゃないしな」
『左様ですか。でしたらこれが終わってから聞きますね』
「ああ。またな」
『ええ、また』


 雨は、未だ止む気配がない。






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